ブックタイトル平成25年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

ページ
88/178

このページは 平成25年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書 の電子ブックに掲載されている88ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

平成25年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

IASCのガイドラインでも、初期の心理社会的支援は、食べものなど救援物資を配布することと同時に実施することが記されているが、そう考えれば、初期の心理社会的支援は、救援物資を配布するスタッフを訓練することを通じて実施される必要がある。東日本大震災に際して、宮城県の拠点となった石巻赤十字病院では、職員のためのリフレッシュルームを早期に設置している。これは、外部からの救援者のためというよりも、自らも被災している病院スタッフのためのものであろう。詳細な報告されていないが、直後に不眠不休で活動している時期にはあまり利用されなかった(利用できなかった)であろう。さらに、利用状況を分析すれば、どの時期のニーズが高いのかが分かるはずである。被災者における心理社会的支援のニーズが高くなるのは、基本的ニーズが満たされて、さらに、被災者間の経済的社会的格差が拡大するような状況になる時期であるとされる。災害の性質や規模にもよるだろうが、数か月か半年から1年程度ではないかと思われる。もちろん、支援をする準備が必要であろうが、災害直後に駆けつけるのはごく少数でよいだろう。この点で、岩手県では、1か月以上してからチーム活動が始められたが、こちらの方が妥当であったのではないかと思われる。一方、心理社会的支援は、本来、かなり長期的な活動が必要なものである。先にあげたHobfollの原則は、初期から中期だけを対象としたものだが、通常は、少なくとも数年、さらに可能であれば、その対象者は少なくなるだろうが、5年、10年という時間のフォローアップが行われるのが望ましいだろう。このためには、その地域で本来、心理社会的支援を担当する部門に引き継ぐことが必要になる。もしも、地元に、それを支える組織や活動がないのなら、引き継ぎ先のない心理社会的支援の活動をするのは、地域の文化を無視しており、無責任である。このように考えると、どのような内容の支援活動を行うかということが、時期と人数に関わることがわかる。個別あるいは小集団を対象としたインテンシブな介入であれば、かなりの人数を必要とするが、ポピュレーションを対象とした場合は、そこまで多くの人数を必要とかもしれない。インテンシブな介入の場合、そのスクリーニングによって、選ばれる割合がどのくらいかという想定のもとに、派遣する人数を計画することができるのである。このように考えると、必ずしもチーム型で活動する必要もないかもしれない。医療救護班は、短時間で次に移動してしまう。その時間の中では、こころのケア要員が、個人から時間をかけて話を聴くことができないので、チーム型のほうが、時間的余裕をもって活動できると考えられてきた。しかし、チーム型の場合にも、赤十字社の派遣では短期間しか滞在することはなく、ほぼ単回の一時的関係であり、心理療法に近い介入をすることには、かなり危険が伴うと考えれば、これはメリットとは言えないだろう。日本赤十字社の心理社会支援では、ポピュレーションアプローチが重視されていないことは先に指摘したが、この計画をたてるためには、全体の指揮体制を明確にする必要があるだろう。各支部に、さまざまな決定権がある場合には、それを調整する必要もある。- 86 -