ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

(4)考察看護専門職自律性の下位尺度ごとの得点傾向について、辻ら(2004)の結果と比較していくと、似たような得点傾向を示した。また最も得点が高かったのが自立的判断能力であり、最も得点が低かったのが抽象的判断能力であったのも同じ結果となった。このことから本研究は運動器看護に限定したものの、臨床領域との関連はないと述べている(志自岐;1998b)ように、看護専門職自律性の得点傾向から新たな特徴が見えるとは言いがたい。職位の違いによる得点傾向は、すべての下位尺度において得点はスタッフより主任以上が高く、スタッフと主任以上で有意差があった。職位を得るには経験年数を経ていることもあるが、職位があがることで職務に責任と決定権が生じ、スタッフを統制していく中に自己決定が反映されていくことで、職務への自律性が育まれ、専門職的自律性が醸成されているのではないかと考える。辻ら(2004)の結果でもスタッフと主任以上では全ての下位尺度で有意差があったことから、先行研究と同様の結果となった。また婚姻状況の違いによる下位尺度得点傾向では、未婚より既婚のほうが下位尺度得点が高く、自立的判断能力以外の下位尺度で有意差があった。専門職自律性に影響を与える要因に、内的統制志向と自尊感情が挙げられるが、既婚が示すことは血縁関係以外の家族と共に暮らし家庭生活を営む中で内的統制志向が育まれ、また家庭があり家族がいることが自尊感情の高さの遠因となっていることも予測される。経験年数の違いによる看護専門職自律性の得点変動は、本研究の結果ではいずれの下位尺度においても経験年数に比例するように得点が高くなる傾向を示していたが、菊地ら(1997)の結果では経験年数6年から10年のグループで一時的に得点が下降していたと示されている。菊地ら(1997)の調査が行われたのは1996年と20年近く前のこととなる。2000年には看護師の職能団体である日本看護協会より看護師の継続教育基準が示され、2012年には改定された継続教育の基準ver.2が公開された。この15年の間に看護師の継続教育が必要であることが浸透し、看護師自身も経験年数とともに積み重ねられた継続教育の結果が看護専門職自律性の得点を高めていることにつながっていると推察する。また1995年に2分野で開始された認定看護師は、現在21分野まで拡大し、学会認定資格等看護師の専門性を担保する資格が多数存在する。整形外科経験年数の違いによる下位尺度得点傾向は、経験年数が増すごとに得点は高くならず、おおむね11年から20年をピークに21年以上では点数が下降する傾向となった。整形外科のみ21年以上経験していることは、他の臨床領域との比較を感じづらく、日々繰り返される業務に飽きがあるということなのであろうか。また2年未満と他の区分の経験年数で有意差がつきやすく、特に実践能力や具体的判断能力において有意差が多く生じていた。運動器看護においては、整形外科特有の知識(堀之内ら;2012)や歩行補助具の使い方(齋藤;2013)、多職種との連携などが必要とされることから、2年未満では理解はで98