ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

し利用者を支援する」(三品、2013)ACT(包括型地域生活支援)と呼ばれるプログラムがある。ACTガイド(NPO法人地域精神保健福祉機構、2010)によると、ACTの実践に必要な技術や姿勢としてストレングスを挙げており、ストレングスは精神障がい者が自宅など地域での生活を支援する際の重要な概念の一つである。大迫ら(大迫ら、2008)の研究では、ACTでのストレングスに基づく支援を行うことで、自宅で生活する利用者は「自信の回復」「活動の広がり」「服薬の開始」という変化が生じたとの報告がされている。以上のように、ストレングスを高めるケアは、地域で生活する精神障がい者が一日でも長く住み慣れた自宅で質の高い生活をサポートするのに必要な概念でありケアであると考えられる。しかしACTは人材確保や財源の確保などの課題があり、制度化されておらず、全ての地域で受けられるものではないこと。さらに、ACTは訪問診療を含めた保健・医療・福祉という異なった領域サービスであるなど、特殊性が強いことより、現状では精神科訪問看護が重要な役割を担っていると言える。精神科訪問看護のケアの実際を概観すると、訪問看護で提供される具体的なケアに関して瀬戸屋ら(瀬戸屋ら、2008)による研究では、「日常生活の維持/生活技能の獲得・拡大」「対人関係の維持・構築」「家族関係の調整」「精神症状の悪化や増悪を防ぐ」「身体症状の発症や進行を防ぐ」「ケアの連携」「社会資源の活用」「対象者のエンパワーメント」という8つのケアが明らかにされているものの、ストレングスの視点での結果は得られていない。また、訪問看護において、家族ケアを実施している割合は高いという報告がされている(瀬戸屋ら、2011)。利用者と同居する家族へのケアの重要さについて、家族システム論(鈴木、2012)によると、精神障がい者と生活を共にする家族も精神障がい者と同じようにケアを必要としており、精神障がい者を含めた家族全体が安定することで、精神疾患の再燃にも影響を及ぼすといわれることより、利用者とその家族共に、ストレングスを高めるケアを実践していく必要がある。しかし、利用者やその家族に対して、ストレングスを高めるケアの視点からの研究は見当たらない。本研究は、地域で生活する精神障がい者とその家族が、住みなれた地域でより質の高い生活をして、在宅を中心とした生活を継続していけるためにも、精神科訪問看護師が日々の訪問支援の中で、利用者やその家族のストレングスをどのように捉え、利用者のリカバリーに向けてどのようにストレングスを用いているかを帰納的に明らかにすることは重要であると考えられる。*用語の定義1「ストレングス」:ストレングスとは、精神科訪問看護を利用している精神障がい者やその家族の疾患・障害・問題点ではなく、関心・願望・能力・才能・得意とすることなど健康的な部分や可能性のこと。2「精神科訪問看護」:精神科訪問看護とは、ACTの訪問看護や保険医療機関が行う外来医療の一環としての訪問看護、自治体の保健師・看護師が実施する訪問指導を除103