ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

かった。これに対し、対物レンズの倍率の高い油浸光学系では、画素数を下げても解像度の良い画像が得られ、今日一般に市販されているコンピュータのスペックで十分実用的な画像処理が可能であった。例えば、腎臓であれば、糸球体の立体画像よりも、ネフロンの全体像の精細な立体画像を得るための方が高い画像処理能力を必要とする。弱拡大で広い範囲の像を把握し、強拡大で微細な構造を観察することにより、立体像の理解が深まるため、教育用画像としては両者を用意するのが理想であるが、そのためには、画像処理のための十分な環境整備が必要である。共焦点レーザー顕微鏡は、本来、蛍光ラベルされた物質を観察対象とするが、特に蛍光ラベルに蛍光抗体を用いる場合には、抗体が大きな分子であるため組織内への浸透に限界がある。今回は、通常の薄切切片における方法と同様、試料をスライドグラスに貼り付けたため、貼り付けた面から蛍光抗体が浸透せず、100μm程度が限界であった。文献的にも150μmあたりが浸透の限界で、切片厚として300μm以下にする必要があるとの記載がある(Yokomizo, Yamada-Inagawa, Yzaguirre et al., 2012)。研究レベルでは、神経細胞など特定の細胞にgreen fluorescent protein (GFP)などの蛍光を発する遺伝子組み換えマウスを用い、その蛍光を立体的に解析することが行われるが(Dodt, Leischner,Schierloh et al., 2007)、教育用の画像を得る方法として検出する細胞や組織ごとに遺伝子組み換えマウスを用意することは、あまり現実的ではない。蛍光ラベル物質の組織浸透性を高めるために、組織材料の固定、反応液の界面活性剤の濃度や反応時間の長さ、撹拌方法等の検討が必要である。反応液の撹拌については、近年新たな技術として、術中迅速病理診断用の免疫染色標本作製のため抗原抗体反応を促進することを目的に開発された電界撹拌染色装置がある(サクラファインテック, 2014)。抗原抗体反応時間の短縮を目的とするが、抗体の組織浸透性の改善に利用できないか検討する価値があるものと考える。なお、実験動物においては、血管を蛍光ラベルする方法として、生きている状態で蛍光ラベルしたトマトレクチンを静注する方法がある(Debbage, Griebel, Ried et al.,1998)。この方法を用いると、切片厚に関わらず血管像を撮影し構築できる。2)3Dプリンター出力の課題3Dプリンターには、光造形、粉末焼結、熱溶解樹脂積層法、インクジェット方式、石膏粉末を樹脂で固め積層する方式といったさまざまな造形方式がある。用いられる材料も、樹脂系の素材をはじめとして、石膏、金属を含め多様である(水野, 2013)。今回用いた3Dプリンターは、光硬化性のアクリル系樹脂を材料とするインクジェット方式である。複雑な組織構築を出力するためには、精細な出力性能が必要であるが、インクジェット方式は細かな造形に向いているとされている。また、水溶性のサポート材に特徴があり、出力構造体としてのポリゴンに欠陥がなければ、構造体に不連続部分があっても出力可能であることが利点と考えられた。立体模型を作製する場合、構造体としての強度、色、硬さや柔軟性といった観点を含め29