ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

て、造形方式やそれに依存する材料を選択する必要がある。今回の研究では、単色のみの出力であったが、蛍光抗体法で複数の蛍光物質を用いて同時にいくつかのタンパク質をラベルし、色分けされた組織構築を3Dプリンターで出力する場合は、カラー対応の3Dプリンターを使用することが必要となる。従来フルカラー出力が可能なのは石膏粉末を用いた方式のみであったが(水野, 2013)、最近では、多様な樹脂素材に対応したカラー3Dプリンターも市販されている。通常のSTLファイルには含まれていない色の定義を含めた画像処理が必要である。2.作製した視覚教材に関連する組織形態と生理学的機能の解説器官の組織構造と機能とは密接な関連があることから、視覚教材で示される形態を手掛かりに関連する機能を解説することによって、理解の助けになるものと考えられる。時間に余裕があれば、画像の説明に自ら取り組む学習法も教育効果が上がるものと考えられる。肺胞の画像では、細かいスポンジ状の構造を示す肺胞の立体構築が示されている。薄い壁がガス交換の場となっており、酸素の体内への取り込みと二酸化炭素の放出、ガス分圧、体内での酸素や二酸化炭素の運搬、呼吸と体内のpH調整といった項目とつながる。間質性肺炎といった病名に用いられる肺の実質と間質の関係についても、説明の助けとなる。気管支の画像では、気管支の分枝が末梢レベルまで肺動脈の分枝と並走していることが示されている。気管支腺上皮表面の線毛は描出されていないが、腺上皮の形態は明瞭に描出されている。ガス交換にかかわる肺胞の構造とは異なり、気管支を被覆する腺上皮は、外からの異物や刺激からの防御のため密に配列し、粘液の分泌、線毛運動によって異物を痰として排出する。腎皮質の画像では、糸球体と尿細管が描出されている。近位尿細管は、ナトリウムやカリウム、水素等のイオン交換を行っており、そのエネルギー産生を担う豊富なミトコンドリアを含む。通常のH-E所見で、近位尿細管上皮のミトコンドリアはエオシン好性の糸状ないし粒状物として認識されるが、共焦点レーザー顕微鏡の平面像でも、よく見ると尿細管上皮の細胞質は均一ではなく粒状に高輝度であり、ミトコンドリアに由来する自家蛍光を拾っている可能性が考えられる。糸球体の毛細血管を抽出した画像では、血液から原尿を濾し出す濾過装置としての形態が観察できる。ネフロンとその機能の理解の一助になると考えられる。肝グリソン小周囲の画像では、肝臓の門脈、胆管、動脈は末梢に至るまで並走することが示されている。中心静脈、ルイ度の抽出画像では、肝細胞の代謝にかかわる物質の取り込み、産生した物質の血中への放出の場である類洞が、肝細胞索間に走行し、中心静脈へ合流する様子が観察される。副腎髄質毛細血管網は、交感神経緊張状態の際に副腎髄質細胞の産生するアドレナリンが放出される場であり、自律神経系の機能と関連がある。30