ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

3.組織立体像の医学教育における活用について解剖学は、医学部のみならず、看護をはじめとするさまざまな医療系職種の教育課程で、その初期段階に修得が求められる重要な基幹科目である。しかし、医学部ほど解剖学をはじめとする基礎医学の学習に時間をかけることができず、また、一部の恵まれた状況を除いては、医学部で実施されているような解剖学実習や組織学実習のような、実際の体のしくみに直接触れる機会に乏しい。このような限られた条件の中であるが、医療の高度化に伴い、医療系の教育課程において、解剖学をはじめとする医学や生命科学の基礎を効率よく修得する必要があるものと考える。看護の教育課程における医学教育は、1980年代末からの指定規則の改正により、まず解剖学、生理学を解剖生理学に統合し、さらに生化学、栄養学、薬理学、病理学。微生物の内容を含めて、今日「人体の構造と機能」および「疾病の成り立ちと回復の促進」という形に統合されている(梶原,清村,鹿嶋, 2008)。従来からある学問領域の枠組みに捉われず、人間を部分や単なるメカニズムでなく総合的な視点からとらえようとする看護の専門課程の学習につながるよう工夫された改正と捉えることができる。このような中で、看護の視点から形態機能学の教育方法を工夫する試みがなされている。しかし、年々学ぶ内容の増える過密な教育課程の中にあって、人体の構造と機能を扱う形態機能学は情報量が多く難解な内容を含むこと、その後の看護の学習内容との接点を学生自身から見出すことが必ずしも容易でないことから、授業方法に関わらず、内容の理解に関する評価が低いことが問題点として指摘されている(菱沼,齋木,大久保, 2002)。肉眼的レベルから細胞・組織レベル、分子・原子レベルに至る人体の各階層を関連付け、形態と機能の面から有機的に理解することが、生理的な仕組みや病態の理解の上で重要であり、そのことが看護をはじめとする医療職に求められる人間の総合理解につながる。組織学は、人体の肉眼レベルの構造と、機能に直結する分子レベルとをつなぐ階層を扱うことから、病態生理の理解の1つの鍵となる領域であるが、肉眼的解剖と比べさらに抽象的な内容で、看護においてはその後の専門的な学習との接点が見出しにくいものと考えられる。このような状況に対し、組織の立体視画像や、実際に手に取って様々な角度から観察できる立体模型によって組織の立体的構造を体感することができれば、学習のモチベーションを高めることにつながるものと期待される。今回作製した糸球体の立体モデルの例では、血液から原尿を濾し出すフィルターとしての毛細血管の屈曲構造を視覚的に実感することができる。教育には多角的アプローチが必要であり、看護の視点からのアプローチや工夫が重要なのはもちろんであるが、看護との関わりといった視点にとどまらない学問としての体系や、その魅力を伝えることも、すぐに目に見える形での効果は期待しにくいものの、より深い学習を促す上で意味があるものと考えられる。このような視点は、さらに先の教育課程、31