ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

すなわち、医療、医学の進歩や変化を背景とした医療職としての生涯教育や、大学院教育の重要性ともつながる。たとえ入学後すぐの段階で学んだ解剖学、組織学、生理学等の内容に興味が持てず、十分に習得できなかったとしても、一通り専門的な内容を学んだ後にもう一度見直すことによって、看護の視点を含めた新しい視野が得られるであろう。さらに、医療現場に出てからの1つ1つの経験から、高度な専門的内容の学習や研究への意欲が生まれる。教育および学習には、様々な過程や段階をいわば行きつ戻りつするような性質があり、医学教育を職業人としての生涯を含めた長い時間経過で、幅広く捉えていく必要があるものと考える。イメージが湧きやすく、興味が深まるよう、新しい技術や研究成果を有効に生かした良質な視覚的教材を工夫し、必要な時に活用できるよう提供することは、組織学領域の教育において、初学から高度な専門教育にも資する効果的なアプローチの一つと考えられる。4.まとめと今後の展望初学者から大学院レベル、生涯教育に至るまで、看護をはじめとする医療従事者を含めた幅の広い対象をもつ医学教育に、新たな研究成果や技術的進歩を還元していく努力や工夫が今後とも求められる。医学教育は、様々な領域からの多面的なアプローチが必要であることは言うまでもないが、その中の1つとして、本研究では組織立体モデル作成の試みとその教育への活用法を提示した。組織の教育用立体画像の構築には、標本作製、撮影、画像処理、出力といった各プロセスの設備や環境を整える必要がある。近年3Dプリンターは、数万円で購入可能なものも販売されるようになっているが、精細な出力性能を持つものや、カラー対応機種は極めて高価である。多様な出力方式、造形物の材料を検討するために、現時点では出力サービスを利用するのが現実的と考えられるが、まだ高価である。しかし、将来的には技術革新や普及によって3Dプリンターの値段が下がり、活用の幅が広がっていくことは間違いないであろう。今回は、先行的研究の意味で、マウスの臓器を用い、基本的な方法論や手技の検討を行った。今後の展望としては、立体画像構築上の技術的改良を進めつつ、教育・研究のための使用に同意を得られた献体や剖検由来の人体組織を含めて様々な器官組織の立体画像を蓄積し、アーカイブ化することが考えられる。貴重な試料に由来する視覚的な教材をweb上で共有することにより、単に医療職やその教育課程を対象とするのみならず、学校の理科教育や、広く一般向けの健康教育活動にも活用できるものと考えられる。標本作製や教育用に適した画像の制作は、手間と時間のかかる作業であるが、誰もが必要に応じてファイルをダウンロードしたり、3Dプリンターに組織の模型を出力できるよう、アーカイブの構築を目指していきたい。32