ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

4)考察脳ドックは1988年3月に新さっぽろ脳神経外科病院にて「脳の人間ドック」として開始され、全国各地に急速に広がり、その目的はMRI(Magnetic Resonance Imaging核磁気共鳴画像法)を用いた無症候性脳梗塞のスクリーニング7)、MRAを用いた脳動瘤、狭窄性血管病変のスクリーニング8)9,10、脳ドックの医療経済効果の有無)が中心であった。本研究に用いたリスクスコアは、多目的コホート研究(JPHC Study:Japan Public Health CenterbasedProspective Study,JPHC)11)によって、リスク因子(性別、年齢、BMI、喫煙歴、糖尿病の有無、血圧)とリスク因子の合計点数であるリスクスコア(10年間で脳卒中を発症する確率と血管年齢)が2014年に公表され、10年間で脳卒中を発症する確率、血管年齢が算出可能となった。受診者の一次予防を推進するためには、生活習慣の改善を目的とした、保健指導の根拠となる要因を明らかにする必要があり、本研究は、脳ドック受診者の脳血管疾患(脳卒中)発症リスクを健診情報を用いて検討し、一次予防行動の推進を目的として実施したことは意義があると考える。(1)対象者の特性と生活習慣改善のための支援12脳卒中発症と飲酒習慣、喫煙習慣をみると、国民栄養調査)における一般住民の飲酒率は19.7%(男性34.0%、女性7.3%)である。脳卒中データバンクに登録された脳梗塞66,944事例(ラクナ梗塞22,675例、アテローム血栓性脳梗塞(梗塞と塞栓含む)24,135例、高血圧性脳出血14,602例、くも膜下出血5,344例の症例)を元にした、大木ら13)による飲酒習慣と喫煙率に着目した解析結果によると、飲酒率は出血性脳卒中(くも膜下出血、脳出血)が脳梗塞に比して高く、男性脳卒中患者での飲酒率、喫煙率は一般住民より高かったが、女性においては、飲酒率はくも膜下出血と脳出血、喫煙率はくも膜下出血において一般住民より高かったと報告されている。本研究対象者の喫煙習慣(喫煙率)は20.6%(男性34.1%、女性9.0%)であった。年齢が高くなるにつれ、男女共に一般住民と比べ喫煙率は低くなっているが、本研究においては女性の喫煙率が高く、リンクマン指数をみても「601以上」の人の割合が多いことが明らかとなった。脳ドックの目的でもある脳卒中を予防するためには、脳ドックを受診する以前に「たばこを吸わない」「適量の飲酒」という個人の一次予防活動も重要であることが考えられる。また、糖尿病の有無をみると、男女共に年齢が高くなるにつれ、「有(糖尿病型)」の割合が増加していた。糖尿病が脳梗塞の独立した危険因子であることはよく知られており、14メタアナリシスによると糖尿病患者の脳梗塞発症リスクは2.27倍)、オッズ比1.31 15)で、脳梗塞の有意な予後不良因子でもある。受診者に対し、保険者が主体となり実施されている特定健康診査や特定保健指導等と連携し、望ましい生活習慣を維持、開発するために、保健師は受診者の生活背景を把握した保健指導を行うなどを考慮し、ヘルスプ67