ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

国の変化(伝統的な中立法規では人道的活動はほとんど義務付けられていなかった)という観点から、研究する必要がある。3赤十字国際委員会の中立にスイス連邦の中立がどのように影響を与えたのかは、平成24年度の研究では必ずしも十分究明できなかったが、この点は、赤十字の中立を考えるうえで非常に重要であるため、明らかにすべきである。4各国の赤十字社の中立については、ジュネーブ諸条約に中立国の赤十字社についての規定はあるが、赤十字社の中立についての言及は皆無である。また、特に第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけて、現在の先進各国の赤十字社が愛国主義に走ったことは、すでに指摘されたことである(Hutchinson, 1996)。現在の赤十字の基本原則では赤十字社も中立を守らなければならないが、他方、政府の人道的事業の補助の役割も独立の原則から担わなければならない。各国赤十字社の中立に関する探究も必要である。上記の課題から、平成26年度研究の目的を以下のように設定した。1国家の中立について、平成24年度研究では不十分であったウィーン会議から第一次世界大戦までと第二次世界大戦後の中立制度の衰退について明確にし、中立制度の歴史的な経緯がわかり、また各時代の特徴がわかるようにする。また中立国による人道活動についてもさらに調査し、赤十字との関連性と中立国の変貌について検討する。2赤十字の中立について、第一に、スイスの中立あるいは国際法の中立制度がどのように赤十字(特に赤十字国際委員会)の中立に影響したかを明らかにする。第二に、各国赤十字社の中立について、ジュネーブ条約と赤十字の基本原則という観点から検討する。3上記1と2を合わせ、中立について総合的に叙述する。これにより、赤十字の中立に影響を与えた国際法が定める中立制度を明らかにし、それにより赤十字の中立を深く理解することができると考える。(2)教育・研究事業の方法文献検討による。また、東京に出張し、日本赤十字社本社で資料収集を行った。(3)教育・研究事業の結果本年度研究において購入した書籍のうち、研究テーマと特に関連性の高いものを挙げ、その内容を掲げる。1 Maartje Abbenhuis, An Age of Neutrals: Great Power Politics, 1815-1914本書は、ウィーン会議から第一次世界大戦まで、ヨーロッパにおいて中立制度が成立し、中立制度がもっとも輝いた時代に焦点をあてている。ナポレオン戦争後の19世紀は、ヨーロッパにおいて大戦争は発生せず、ヨーロッパは海外に植民地を求め、繁栄した。また、戦争が発生しても、中立国が存在するため、貿易を継続することができ、経済活動が停滞72