ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

することはなかった1。1815年からの百年間、ヨーロッパは大国間の戦争を限定的にしたが、中立国は重要な要素だった2。そこでは、ヨーロッパの大国も条約上の永世中立(例:スイス、ベルギー)および自発的な中立(例:スウェーデン)をむしろ積極的に支持したのである3。1864年にジュネーブ条約が締約され、その後に発生した普仏戦争ではスイスがジュネーブ条約を順守するよう普仏両国に促したように4、中立と人道は合流しはじめた。また、スイスやベルギーなどの永世中立国は19世紀に戦争や革命から逃れてきた難民や亡命者を受け入れる人道的な活動を行っていた5。これは中立国と交戦国との関係を複雑にしたが、他方、中立国が戦争の惨禍を軽減するのに貢献し、また、中立国の使命に人道的な役割が加わった、ということができる6。さらに、これらの中立国には人道団体も含む国際機関が数多く本部をおいた。ジュネーブには赤十字国際委員会、ストックホルムとオスロにはノーベル財団、そしてハーグには常設仲裁裁判所がおかれたのである7。2 Mikael af Malmborg, Neutrality and State-Building in SwedenMikael af Malmborgは、スウェーデンの約二百年にわたる中立政策を時代順に論じている。その結論のなかで、スウェーデンの特徴として、第一に宗教改革により、教会が国家のもとにおかれ、宗教と政治の対立が他国と違って少なく、1814年から平和を維持することができたということを挙げている8。第二に、スウェーデンはヨーロッパの大国間の競争に巻き込まれなかったということを挙げている。スウェーデンは軍事的な敗北のあとで、帝国を手放したため、民族問題を抱えずに済んだのである9。第三に、スウェーデンは、これも軍事的な敗北のあとに、経済的発展と福祉の充実に傾倒した10。輝かしい過去に誇りはあったが、スウェーデンは軍事的な拡張は慎み、防衛的な武装中立の政策をとったのである11。3 Frank J. Coppa, The Papacy in the Modern World: A Political Historyヴァチカンは世界最小の国家であり、二つの大戦では中立を守った。しかし、カトリックの総本山であり、宗教団体でもあるため、戦争を終結させ、平和をもたらす努力をした。1 Abbenhuis, 19.2 Ibid., 39.3 Ibid., 45.4 Ibid., 1355 Ibid.6 Ibid., 135-1367 Ibid., 162.8 Af Malmborg, 194.9 Ibid.10 Ibid., 195.11 Ibid.73