ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

ページ
76/128

このページは 平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書 の電子ブックに掲載されている76ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

人道団体としての赤十字とは異なる面がある。本書は、ローマ教皇についての政治的な現代史を扱っているが、大戦中の中立についても詳しく叙述している。第一次世界大戦中にローマ教皇であったベネディクト15世(1914-22年)は中立政策を維持したが、Coppaによるとベネディクト15世はどちらの側の交戦当事国を非難あるいは支持しないという公平(impartiality)の立場をとった12。また、ベネディクト15世は、ベルギー、リトアニア、ポーランド、レバノン、モンテネグロ、シリア、ロシアの子供を支援するなど、軍人および民間人の犠牲を和らげようとしたが、筆者はこれを「第二の赤十字」と称している13。もっとも、精神的あるいは人道的な支援にとどまらず、教皇は平和の実現に向けても尽力した14。第二次世界大戦においても、ベネディクト15世の公平性は次のピウス11世(1922-39)およびピウス12世(1939-58)に引き継がれた。したがって、両教皇はどちらの側も非難あるいは支持しないという公平性から、ドイツによるユダヤ人迫害を非難することはなかったため15、とくにピウス12世は批判の対象となった16。もっとも、ピウス12世は捕虜やユダヤ人からの何百万もの支援要請を受け、それらに応えていたことも明らかになっている17。4 Alain Destexhe, Neutrality or Impartiality (in Kevin M. Cahill ed., Historyand Hope)国境なき医師団の医師であるDestexcheは、赤十字の中立を批判的な視点から論じ、「国境なき」団体は、ナチスの強制収容所のような状況に遭遇した場合、そのような行為は非難し、また、そのような行為と戦わなければならない、と主張する18。ビアフラ内戦において中立の赤十字は、食料をそれを必要とする人々に届けることができず、それを可能にしたのは教会であった。現代の概念である人道的干渉(humanitarian intervention)を編み出したのである19。中立の辞書的な意味は「戦争において当事国を支援しない」であり、赤十字の中立の原則は、この通常の意味の中立の「過激な解釈」であるとDestexcheはする20。赤十字は、たとえば、人種主義政権と民主的団体を区別せず、また、被害者と加害者も区別しないが、このような解釈は危険であると主張する21。そして、Destexcheは、中立よりも公平を重視12 Coppa, 142.13 Ibid., 143.14 Ibid.15 Ibid., 156, 168.16 Ibid., 172.17 Ibid.18 Destexhe, 57.19 Ibid.20 Ibid., 65.21 Ibid., 67.74