ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

するべきであるとする。すなわち、中立は戦争当事国に焦点をあてるが、公平は個人としての犠牲者に注目するべきであると、Destexcheは主張しているのである22。5 Efraim Karsh, Neutrality and Small States本書は、第二次世界大戦中とその後のヨーロッパの中立国について論じており、1988年に出版されたが、今回あらためて「リバイバル」出版された、中立国に関して論じるとき、欠くことができない出版物である。まず中立の定義であるが、そこで注目されるのは非同盟中立(neutralismあるいはnonalignment)であり、これは中立とは異なる。中立は国際法で確立した制度であるのに対して、非同盟中立はあくまでも政治的な思想であり、国際法に依拠したものではない23。国際法にのっとった中立では、戦争に参加することができないが、非同盟中立は参戦を否定していない24。他方、中立国は戦争当事国に思想上、好意を寄せることまでも否定されているわけではないが、非同盟中立国には「思想上の中立」が要請されている25。Karshの分類では、中立への侵害は二つの形態がある。一つは、外からの侵害である26。すなわち、戦時において、交戦国はハーグ条約により、中立国の主権を侵害してはならない。もう一つは、内からの侵害である27。中立国にとって、中立の「エッセンス」は公平の原則であり、交戦国に公平な対応をしなくてはならない28。もっとも、ここで特徴として挙げられるのは、公平の原則とは交戦国への行動は公平でなくてはならないが、交戦国のイデオロギー上の立場に対して親近感を抱き、あるいはそれを公言することまで、国際法では禁じられていないことである29。ただし、それが行動に移されたときは、中立の原則が侵されることになる30。次に中立制度の歴史であるが、大国にはさまれた小国は「緩衝国(buffer state)」として生き残ることができるかもしれない。大国は緩衝国を設けることにより、紛争を減らすことができるのである31。スイスはかつて、フランス、ハプスブルク帝国、そしてイタリアにおけるスペインの勢力の間の、そして後に、フランスと統一されたドイツとイタリアの間の緩衝国として存続した32。ヨーロッパにおいて、ウィーン会議後の「ヨーロッパ協調(Concert of Europe)」が機能している間は、緩衝国の独立は保たれたが、ヨーロッパ全22 Ibid.23 Karsh, 28.24 Ibid.,25 Ibid., 28-9.26 Ibid., 22.27 Ibid., 23.28 Ibid.29 Ibid., 24.30 Ibid.31 Ibid., 82.32 Ibid., 83.75