ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

ページ
87/128

このページは 平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書 の電子ブックに掲載されている87ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

2)戦略的統合国連は、戦略面の統合を図るために、2006年、『統合ミッション立案過程』(IMPP)を承認した。IMPPとは、「国連システムがその関連部分をすべて関与させることにより、特定国における戦略目標について、共通の理解を確立するための手段」であると位置づけられている70。つまり国連の多様な機能を統合し、ミッションを計画・支援するための指針といえる。IMPPは、IMTFの設立からミッションの継承・撤退までの一連の過程における諸手続きを規定したもので、『統合に関する事務総長政策委員会決定2008/24』において、「UNCTおよびミッションが展開するすべての紛争地域および紛争後状況における指導的原則」であると位置づけられ、組織的統合(いわゆる「統合ミッション」)が採用されていない複合型ミッションにも適用されている71。このIMPPの手続きに基づき、現地ミッション、UNCT、OCHAは統合戦略枠組(ISF)を策定し、戦略目標並びに役割分担に対する理解の共有化を図ってきた。このようにして、本部レベルでは国連平和維持活動局(DPKO)、政務局(DPA)、国連専門機関との間、現地レベルではミッションとUNCTとの間の戦略的パートナーシップの構築が進められてきた。2.統合アプローチへの批判組織と戦略両面の統合化は、国連システム全体の一貫した紛争国への関与を可能にしたが、一方で運用上の課題も指摘されている。メットカルフェらによると、統合アプローチは、1人道支援要員の安全、2人道アクセス、3非国家武装勢力への人道支援、4人道アクターの認知、5権利擁護(アドボカシー)の5つの領域に「正」だけでなく「負」の影響も与えるという72。人道支援要員の安全面では、軍事・政治部門との緊密な連携は護衛の配置や安全情報の共有を可能にするが、人道活動と軍事・政治活動との峻別が困難となり、人道支援要員が危険にさらされる可能性があると指摘している73。人道アクセスについては、治安部門の兵員や兵站を使用することにより、支援物資の補給路を確保するとともに効率的な輸送が可能となる一方、要員の「危険回避」アプローチを採る傾向にある治安部門からの圧力により、受益者へのアクセスが制限される場合がある74。70UN, Integrated Missions Planning Process (IMPP), 2006.71United Nations, Decisions of the Secretary-General ? 25 June meeting of thePolicy Committee.Decision No. 24/2008, 26 June 2008.72Metcalfe, V., Giffen, A, Elhawary S., UN Integration and Humanitarian Space,Humanitarian policy Group, 2011, p.25.73Ibid, p.27.74Ibid, p.29.85