ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

ICRCに代表される、人道原則(公平、中立、独立)に基づく従来型の人道活動では、敵味方の区別なく支援を提供することが求められる。しかし、一部の国連ミッションでは治安・政治部門からの要請により、和平の「妨害者」(Spoiler)に対する支援活動を控えた事例があり、統合アプローチが人道原則に基づく支援活動を困難にするとの指摘がある。例えば、アフガニスタンでは、タリバンに対する人道支援が和平プロセスの障害になるとUNAMAが主張したために、タリバン支配地域における人道支援が困難になった75。統合アプローチは、人道アクターが被介入国・社会並びに現地住民等からどう認知されているかにも影響を与える76。特に高度に政治化した国連ミッションが展開している国では一層重要である。国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)の場合、MONUSCOの軍事部門はコンゴ民主共和国軍(FARDC)に武器供与することによって能力強化を図る一方、人道支援要員に護衛として付くこともあるため、その要員はFARDCと敵対する武装勢力から中立な活動を行っていないと認知されることになった。統合アプローチは、権利擁護の活動にも影響を与えている77。統合化によってSRSGから国連人道機関に至るまで、多様なアクターが一体となって文民保護等の権利擁護活動に関与することが可能となる一方、政治的要請により、このような活動が自粛されることもある。2003年から展開している国連リベリア・ミッション(UNMIL)では、HCを兼務するDSRSGが任命されたが、UNMILからの政治的要請に配慮するあまり、HCとしてのリーダーシップが低下するのではないかと懸念された。またOCHAもUNMILに統合されたことにより、人道的課題の軍事的・政治的課題への従属化が進展するのではないかと指摘されるようになった78。実際、2005年10月に控えていた選挙を予定通り実施し、正統な政府を構築するという目的を達成するために、UNMILは、帰還先の住居が十分に確保されていないにもかかわらず、避難民を帰還させた。これは、翌年4月に採択された安保理決議1674に明記されている「安全で尊厳ある持続可能な帰還」の観点からすると、文民保護に反する対応であった79。上記5つの批判に加え、上杉は、国連ミッションとUNCTの統合によって、UNCTとNGOとの関係が希薄になる可能性を指摘している80。つまり統合アプローチによ75Donini, A.,‘Between a Rock and a Hard Place: Integration or Independence ofHumanitarian Action?’International Review of the Red Cross, Vol93, No.881,2011, pp.141-15776Note.10, p.3477Ibid.78Hansen, G., Humanitarian Agenda 2015: Principles, Power, and Perceptions ,Feinstein International Center, 200679UN, S/RES/1674.80前掲386