ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

ページ
89/128

このページは 平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書 の電子ブックに掲載されている89ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

って国連ミッションからの政治的要請にも配慮しなければならないUNCTと協働して活動することは、NGOにとって、その自由な行動を制限することを意味する。これにより、NGOがUNCTと距離を置くことによって、地域全体の人道活動の質が低下することが懸念されている。3.統合アプローチの最近の動向このような人道的ジレンマが生じるのは、人道原則を担保するための明確な指針が欠如していることが原因であるとの指摘がある81。もとより、このような指摘に対し、国連並びに国連諸機関は何も対応して来なかったわけではない。既述した『統合に関する事務総長政策委員会決定2008/24』では、統合アプローチにおける人道原則への配慮について言及されている82。またOCHAも、現地の治安・政治状況、現地社会でのミッションの受容度、国連以外の人道機関との関係も考慮し、統合度を決定すべきであるという立場を表明している83。一方、統合アプローチの計画・支援に関する指針であるIMPPの中では、政治的要請と人道的要請が対立した場合の適切な対応や国連以外の人道機関との連携の在り方については明確な記述がない。これにより、国連人道機関の間でも、UNHCRやUNICEF(国連児童基金)のような積極派からOCHAのような慎重派まで、統合アプローチに対する立場には幅がある84。このように、人道原則を担保するための指針の欠如は、現場での混乱や一貫した対応を妨げてきたと推察される。しかし、2013年、国連はIMPPに代わり、『統合的評価と計画に関する指針』(Policyon Integrated Assessment and Planning)と『統合的評価と計画に関する手引き』(Integrated Assessment and Planning Handbook)を公表した85。前者では、統合ミッションの展開が人道活動にもたらす便益と危険性を十分考慮することを原則として掲げている。後者では、1ホスト国政府の統治の及ばない地域で、どの程度人道活動が展開されているか、2紛争当事者は人道アクターと政治・治安アクターを区別できているか、3紛争当事者並びに現地住民に人道機関は認知されているか等、統合アプローチのアセスメントと立案に際し考慮すべき事項がより具体的に提示されており、人道活動への配慮がなされている86。81Note.10, p.46.82Note. 983UNOCHA, Policy Instruction: The Relationship Between HumanitarianCoordinators and Heads of OCHA Field Offices, May 2011.84Harmer, A.,‘Integrated Missions: A Threat to Humanitarian Security?’International Peacekeeping, Vol.15, No.4, 2008, pp.528-539.85UN, Policy on Integrated Assessment and Planning (IAP), 201386 IAP Working Group, Integrated Assessment and Planning Handbook, 201387