ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

2012)。そして、ここでも、上記の2つを国際看護の主要な活動だと指摘している。国際看護の定義についてどちらの立場をとるにしても、両者が言及する看護が関わる事象は共通している。1つは国境を越えた看護師による活動である。これには、海外で行なう、いわゆる国際協力や援助活動が含まれている。2つめは日本国内で暮らす文化的背景を異にする人びとへの看護サービスの提供である。病院や診療所あるいは高齢者施設の利用者が文化的に多様になっているという理由がある。看護師の活動が、国境の向こう側とこちら側という空間的差異で示されているため、一見すると相反するベクトルが示されているようにみえる。しかし、これらの2つの看護のために求められているのは共通した要素である。それは、(看護師の背負う文化的背景とは異なる人びとの間での)多様な文化状況での看護活動のために求められる知識や対応力である。つまり、国際看護学では、看護師による異文化理解と受容の必要性と重要性と、それを看護師養成教育に取り入れることが求められているのである。しかしながら、看護師養成教育に限らず、日本の教育全般においては、異文化理解というと、外国語教育や国境を越えての「研修」という名の下での海外経験が連想される傾向にある。これらの教育活動が参加者に異文化体験をさせるという点で有意性はある。しかし、日常的な意味での多文化・多民族状況の実態理解や対応を身につけるという意味では、教育における国際や国際的という部分では曖昧さが残っている。そして日本の教育全般のこうした曖昧な傾向は、日本での看護師養成教育における異文化理解あるいは国際(国際的/国際性)においても当てはまるといえるだろう。そこで、この研究では、まず多民族社会である英国、アメリカ合衆国そしてオーストラリアの看護師養成教育課程における文化ケアの取り上げられ方を調べ、それに基づいて日本の看護師養成教育への応用の可能性を検討することを目的とした。英国、アメリカ合衆国そしてオーストラリアは、先進国としての看護師養成教育の歴史を有している。周知のように、近代看護師養成教育は英国で始まり、世界中に多大な影響を与えてきた。アメリカ合衆国の看護師養成教育は、第2次世界大戦後の日本の看護界に大きな影響を与え続けている。オーストラリアは英国の植民地として始まった歴史的経緯から、社会の仕組みや制度において英国の影響を強く受けている。一方で女性参政権を早くから認めたことにみられるように、「平等」の実現などについては独自の施策を展開してきており、「格差解消」「公正性」の確保などの考え方が明確である。これらに加えて、3カ国はすべてが多民族・多文化の状況にあり、歴史的にはこれが社会に大きな影響をもたらしてきている。特に、文化的背景を異にする人びとと共存するために社会における公平性や人間の平等性に関わる問題については、これらの国ぐに1960年代以来はすでに半世紀にもおよぶ試行錯誤を経験してきている。例えば、アメリカ合衆国においては1960年代のはじめから、アフリカ系市民(アフロ・18