ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

アメリカン=黒人)が、アメリカ合衆国市民として白人系市民と同じ権利の獲得を目指した公民権運動を展開した。キング牧師のワシントンDCでの演説はあまりに有名である。かれは目的半ばにしてこの世を去らざるを得なかったが、少数派の思いは「公民権法」(1964)として結実した。英国では、人種や民族差を理由にする差別を禁止する「人種関係法」(1965)が、アメリカ合衆国の公民権法成立の翌年に制定された。その後、この法律は改定を繰り返し、さらに性差や障害に起因する差別禁止を規定した反差別法と統合されて「平等法」(2010年)が施行された。また、オーストラリアでは1967年に先住民を国勢調査に加えるという国民投票によって憲法改正が行われ、少数派を認知する動きが活発化した。そして、1970年代に入ると「自主差別禁止法」(1975)が制定された。こうした一連の法的整備によって、民族間に存在する偏見や差別的待遇が一掃されたとはいえない。英国やオーストラリアにおいては、宗教的少数派が社会的周縁に置かれていることから、一部の人びとが極端な行動をとり人びとを震撼させている事件が起きている。またアメリカ合衆国においては、今日でも公的機関による対応がアフリカ系市民の怒りを引き起こしているからである。一方で、これらの国ぐにでは多民族・多文化状況が日常生活のあらゆる側面に反映しており、差異を超えた公平性と平等の確保の実現をめざす動きを感じ取ることができる。3つの国における多民族・多文化状況がもたらす影響は一様ではなく、それぞれの特徴もある。そのことを理解すれば、看護師養成教育にもそれぞれの国の事情や状況が反映しており、3カ国の状況を調べることで看護職養成教育における文化ケアプログラムの諸相を探ることができると思われる。今後、日本においても、国境を越えた人びとの移動によるグローバル化や医療ツーリズムの導入が進んで行くことは容易に想像することができる。それは、保健医療施設利用者の多文化・多民族的状況をもたらすことになり、看護においても異文化出身の患者あるいはクライアントへの対応は重要な課題の1つとなる。文化ケアは看護職養成課程においても考慮するべき重要な教育要素となることが考えられる。その意味では、多民族・多文化状況にある3つの国の事例は、日本の看護師養成教育課程のあり方を議論する上で有意義な参考になると考えられるのである。(2)研究方法質的研究法を用いる。まず、文献資料によって、英国、アメリカ合衆国およびオーストラリアにおける看護師養成教育課程の歴史的展開および現状についての情報整理を行った。そのために、それぞれの国の看護協会や看護師養成教育史を整理した。看護師養成教育課程のカリキュラムおよび関連科目のシラバスなどの文書資料収集を19