ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

位取得コース)。このコースを修了すると、人文社会科学あるいは理系学部での学士学位と看護修士を授与される。この修士学位が看護師登録資格となる。看護修士(既卒者)は、大学既卒者で学士学位を持つ人が看護資格を目指すためのコースである。2年間で必要な単位を取得することで、看護資格を得ることができる。本学部が設定している修了年数3年の学部教育では、卒業に必要な単位数は144である。科目数は24で、各科目6単位が標準である。学年ごとの科目履修数は、平均で8科目(2学期制で各学期4科目)となる(他州の教育機関では科目の単位数が異なる例もある)。これらの科目の中に臨地実習が組み込まれており、その総時間数は880時間となっている。これらのコースの科目は表で示している。科目の後ろに示した〇と△は、実習科目であることを示している。看護師資格取得に特化している学部教育を示した資料1に着目すると、2年次に「保健医療と先住民」という科目があることがわかる。これは、オーストラリア先住民を取り上げたものである。この科目が設定されているのには、オーストラリア社会で先住民が置かれている微妙な立場が関係していると思われる。先住民は、1778年に始まる英国人を中心とするヨーロッパ系住民による植民地オーストラリアの開拓の歴史において長い間迫害の対象とされ劣悪な健康状態に追い込まれていた。先住民がオーストラリア国民としての市民権を得た(つまり国民として扱われるようになった)のは1967年であった。社会の周縁に置かれ続けたこともあって、先住民の健康状態は、オーストラリアの平均を下回ることが多いのである。一方、1980年代に入ってからオーストラリアが国是として採用している多文化主義のなかで、先住民文化はオーストラリア国民に祝福されるべき国民的遺産だとされている。歴史的には迫害の対象となり、他方では国家の文化的な象徴としてもてはやされているのが、先住民なのである。こうした微妙な立場にある先住民の保健医療に関わる事象は国家的課題にもなっている(鈴木1986,1993,1995)。オーストラリアの保健医療の一角を担う看護職者たちは、先住民の現状についての情報を共有することが求められているのである。授業では、先住民の文化や指向する生活様式などの情報や、健康指標をはじめとする先住民の健康状態全般が取り上げられることが多いのである。その意味では、文化ケアに関わる科目である。26