ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

14想起される。「私たちがいたときには、きちんと身なりとかも絶対、少しでもなんかあると絶対受けさせてもらえなかった」と語られているように。しかしそれこそがきっかけであり、次の重要な要素である「問い」を生む。「問い」は重要である。衝撃という感情体験を伴って生じたこの「問い」は、参加者の切実な何かをまとっているために、その参加者から離れない。「悶々とするくらい引きず」るのである。解釈の可能性に関連する様々な自らのこれまでのエピソードや体験が断片的に浮かび上がった可能性もある。つまりこの「悶々と引きずって」いるときに起こっていることは、自分の体験が様々な角度から引き出されたり、ひっこめられたりしながら、自分にとって不可解な出来事への様々な解釈の可能性についての試行錯誤であったともいえる。参加者が「感想文をかいたのは結構時間が経ってからだった」と語っていた。換言すれば「時間が経たないとかけなかった」ということであろう。今の自分が否定的に感じている「かつての自分」と対話するには、「時間」が必要なのかもしれない。その準備ができたときに「書ける」のかもしれない。参加者は、書いている間に、最初想起された自分の学生だった姿とは別の姿が思い出されたと語っていた。そこにその参加者にとっての「問い」の答えが見え隠れしていた。「ああ、自分もそうだった…」と。過去の自分と、目の前の学生に重なりが感じられた時に、その重なりからみつめる学生へのまなざしは、最初の否定的なまなざしとは異なった理解が含まれる。そのまなざしが生まれると、目の前の学生に対する一歩踏み込んだ理解へと導かれ、「その人」流の、学生を育てる関わりが自然と創出されるのであろう。d.結論学内演習の見学は、学生指導者の内で、指導者である自分とかつて学生であった自分との対話を生むきっかけとなる場を提供し、それがあるプロセスを始動させ目の前にいる学生の一歩踏み込んだ理解へと導かれる可能性があることが示唆された。4.他施設での実習指導見学の体験a.他施設実習指導見学の実際他施設実習指導見学のオプションを希望した研修生は41名で、普段携わっている実習が展開される実習期間や実習領域を選択し、実習指導者と行動を共にしながら実習指導の様子を見学した。そのうち、成人系実習を見学したものは27名、母性系実習は11名、小児系実習は3名であった。b.参加者本研修プログラムの受講者でインタビューへの参加同意が得られた31名。c.結果(1)他者を見て自分自身を評価する自分の施設では実習指導を評価してくれる人がいないため、「自分の評価は誰も見ていないから自分でするしかない」と捉えており、だからこそ他者から学ぶほかないと考えていた。例えば、雰囲気づくりが上手な指導者の笑顔や話し方を見て「自分はどうだろう?」と自分自身を振り返り、自分の傾向を考える機会を得ていた。また、指導者が学生と目線が合っておらずアイコンタクトが無いのを見て「学生にとってはどうなんだろう?」と考85