ブックタイトル平成26年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成26年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

備中であると述べている。看護師育成に関しては、卒前教育の拡充とともに現任教育の整備の必要性が認識されており、特に看護師のキャリア開発プログラムの欠如を指摘している。また、開発著しいアジアの新興国として、インドネシアでは急激な社会変化とともに、政策変化にともなう地域格差も新たな課題であると指摘している。日本赤十字社看護部と本学が共同して行ったバンダアチェ津波被害後の現地看護教育施設への災害看護導入支援時に行った大塚ら2)の調査研究によると、インドネシア国の医療の現場での看護師の活動は、日本のそれとは異なっていることを明らかにしている。一方、世界最大の多民族国家かつ島嶼国である同国では、これまでプライマリ・ヘルス・ケア(Primary Health Care; PHC)を主体に地域保健が行われてきた中、多くのインドネシアの看護師は医師不在の保健所での保健医療活動を担っている存在でもあった。また、英バーミンガム大学のD. HennessyらとインドネシアコンサルタントAflarh Hilanおよびイ3)4)5ンドネシア看護師協会のYoanna Kawonalらの詳細な研究)では、島嶼国という地理上の困難、世界的経済不況、同国に特徴的な感染症、そして膨大な人口といった問題はあるものの、近年の発展にもかかわらず、インドネシア国の保健医療サービスの質がさほど改善されないのは、全体として人口10万当たりの看護師数が50名、助産師数が26名であるという量の問題というよりも、十分訓練された(指導的役割を果たしうる)保健専門家が育っていないためであり、そのための取り組みが重要であると指摘している。急激な経済発展の中、さまざまな保健医療環境が大きく変化し、辺境の地といえどもITによる情報が行きわたり、人々がより進歩した医療保健サービスを求めつつあるインドネシアにおいて、看護師の役割は、今後ますます拡大し多様化していくことは自明である。このような状況の中、専門職として看護実践能力の強化と同時に専門職としての自律が求められることも、また当然であり、特に、高度教育を担う大学とその関連病院の実践的教育にあたる指導層の育成は急務であるといえる。A大学では、日本国際協力機構(JICA)の要請を受け、平成22年来、同国からの数次の見学受け入れと本学スタッフの現地訪問を行い、相互の関係者による現状視察と意見交換を繰り返してきた。さらに平成24年度には、同国の基幹看護教育施設である5大学およびその協力病院の看護部、教育担当者、さらに保健省関係者を迎え、九州ブロックの3赤十字病院の参画を求め、看護継続教育システムに関する研修を受け入れることをインドネシア側およびJICAと合意し、平成24年10月に本邦研修を実施した6)。このイ国でのキャリア開発ラダー導入のフォローアップのために短期専門家としてキャリア開発ラダーに詳しい大学教員を複数名複数回にわたり派遣し支援を行ってきたが、思うようにはラダー導入は進まない現状があった。その背景には、導入を促進する要因と阻害する要因の両方が存在していると考えられた。そこで、今回の研究ではそれぞれの要因を明らかにし、今後のキャリア開発ラダーのインドネシアでの導入を進めることに活かしたいと考えた。91