ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

援センターで活動する専門職が行う養成講座は、現在の超高齢者社会における認知症の人に関する知識のみならず、生活者としての認知症の人の現状や権利擁護、支援方法など、現在の地域の実状を踏まえた現実味あふれる講義であった。大学という教育機関での実施を担当した保健師、社会福祉士、主任ケアマネージャーの専門職は、対象が未来の社会を担う人材育成という視点で、認知症の人の暮らしぶりや症状、家族との関係性など、多様な実状が可視化された実状を踏まえた講義の実施そのものが、学生にとって、知識や態度、介護意識の社会化に影響を及ぼしたのであると推察された。(1)養成講座受講後の学生の認知症高齢者に対するイメージ、知識、態度の変化学生の認知症高齢者に対するイメージは、養成講座後に肯定的に変化していた。原田ら(2008)は「高齢者に対しては、加齢に関する知識が乏しいほど、エイジズムすなわち差別が強い」、また、金ら(2011)は、「ある現象に対する理解が深まることは、その対象に対する肯定的な態度につながる可能性が考えられる。認知症の人と感情や行動を共有し、認知症の人を受け入れようとする態度を表している。認知症に伴う行動・心理症状やその対処方法に関する知識を持つことによって、認知症に対する漠然とした不安が軽減され、認知症の人に対してより寛容になる」と述べている。認知症という疾患が本人や家族に与える影響については、専門分野における老年看護学や精神看護学にて、認知症に関連する講義によって、多くの基礎知識が得られている現状にはある。しかし、認知症の人が家族や地域に共に支え、支えられながら生きること、すなわち地域の民生委員や近隣住民と生活を共にし、自宅で生きるにはどのような支援が必要であるのか、その人が生活者という視点で支えるために、看護職や多職種がどのように連携をし、生きることを支えているのだろうか、という養成講座の意義というものは、知識として、学生に多くの影響を及ぼしたのであると想像できる。看護学を学ぶ上で、人の心と身体を理解し、そして社会や文化を創造する力、それらの情報、自然、生きる為に必要なこととは何か、看護基礎教育における基盤分野の「人間を知る」という理解を踏まえた上での養成講座の受講は、超高齢社会の伸展や認知症高齢者数の急増という世の流れの中で、意義をもつであろう。(2)認知症サポーター養成講座受講後の看護基礎教育の展開奥村らは(2009)「大学生は認知症高齢者に対して否定的なイメージをもっていた。人格を形成する過程での様々な高齢者との柔軟なかかわり経験や、世代間の思いやりのある交流などが重要である」と述べている。学生は学習が進むにつれ、看護基礎教育の統合分野である「在宅看護論実習」において、訪問看護ステーション、地域包括支援センター、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型介護などの施設、そして臨床看護学実習の中で、高齢者や認知症の人と関わる機会がある。そのような人々との出会いが自らの人生に影響を及ぼすという側面をどのように学生に体験させ、今後の超高齢社会を担う多様な価値観を受け入れられるような看護職の育成をどのようにはかればよいのだろう13