ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

か。教員の意図的な介入により養成講座を開催したが、それを在宅や地域という「場」で、「経験」として、それらを学生が体験し、感じ、支援、評価するという過程はそう容易ではなく、認知症にケアを提供している場と教育の融合、そして実習指導者と教員のより学生の背景を理解した教育の連携が望まれる。なぜなら、實金(2011)ら、「日本の大学生では手段的不用意式は介護意識の社会化に関連しておらず、ドイツの大学生では関連していた。日本は手段的扶養を支える家族支援システムが不十分であること、手段的扶養は社会に担ってもらえばよいとする意識になっていることを示唆するものである」と述べている。本調査の同様の結果であり、「老親が認知症で介護を必要とする状態になったときは・・(老親扶養意識)」の回答をみると、「家族」、「家族と社会」共に91.5%であり、「将来、私が認知症で介護を必要とする状態になったときは・・(自分が認知症を発症したとき、家族に期待する介護意識)」と同様ではあるものの、「できるなら病院や施設で世話をしてほしい(社会)」の回答が63.4%と、自身の問題となると家族と社会を頼りにしていることがうかがえた。調査対象者の平均年齢は20歳であり、30年後のわが国の高齢化率は37.7%(2045)と予測され(国立社会保障・人口問題研究所,2012)、また船橋ら(2008)は、「日本などアジア諸国を含めて育児支援の政策に限っての家族福祉政策の類型化」を試みている。その中で日本は「家族主義的福祉体制」であり、「福祉施策や福祉ビジネスが未発達で高齢者の世話、子育てや失業などに対しても家族の責任が強調される家族主義が特徴である。家族に過度の負担がかかる。少子化の進行が深刻になる」と指摘している。そのような我が国の福祉体制をみても、学生の生活体験と共に、その後の学生の人生の選択や、介護意識にも影響を及ぼすものでもある。調査対象者である学生が居住している地域は、日本で最も高齢化率が高い地域でもある。そのような地域特性を今後求められる看護基礎教育にいかし、特に地域包括ケアシステムの構築を推進するうえで、将来をみすえた看護職の育成をはかり、学生自身が自助、共助、公助の視点にたち、認知症の支援の方策を多角的に捉えることができる多角的な視野を育む教育が求められているのである。また、荒川ら(2012)は、養成講座修了者の活動実態と活動意欲を明らかにしており、「介護経験とボランティア活動は、活動意欲を高める」と述べている。学生の養成講座受講の経験は、看護職としての認知症の人へのケア、支援に関し、肯定的な影響を及ぼすことが推察される。本研究の限界として、以下の点があげられる。調査対象者が学生に限られているため、他の看護師養成課程において、研究を拡大する必要がある。また、調査対象者の認知症の人との関わりの経験の質に関する検討はできず、本研究は横断的調査に基づくものであるため、その後の看護基礎教育によって調査対象者の認知症の人に対する知識、態度、介護意識の社会化が、更にどのように変化したのかを検討する縦断的調査が望まれる。14