ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

研究活動報告書1.研究活動テーマ武力紛争における人道的空間の確保に向けた諸政策とその課題~赤十字国際委員会を中心に~2.研究活動組織研究活動者:日本赤十字秋田看護大学講師新沼剛3.要旨人道コミュニティにおいて、「人道」と「政治」を峻別することによって得られる自己裁量の余地(いわゆる「人道的空間」)を確保することが重要であるという議論がある。本稿では、「古典派人道主義」と「新しい人道主義」という人道主義の2つの主要な系譜から、人道原則(人道性、公平性、中立性、独立性)の適用をめぐる議論を整理した。その結果、「古典派人道主義」は、1人道原則の軽視、2「ひも付き」援助、3人道支援の政治化、4人道支援の軍事化の点で、「新しい人道主義」を批判していることが分かった。一方、「新しい人道主義」は、人道危機の根源的原因である武力紛争、脆弱なガバナンス、低開発の問題に積極的に関与しない点で「古典派人道主義」を批判していることが分かった。4.キーワード古典派人道主義、新しい人道主義、人道的空間5.研究活動報告(1)研究活動の背景・目的国際社会には人道支援に関与する様々な主体が存在する。2013年現在、国連機関や国際赤十字赤新月運動の他に、約4,400の非政府組織(NGO)とその要員約274,000人が人道支援に携わっている1。これに加え、各国政府による人道支援も行われている。また、財政面でも約2200億ドルもの資金が人道支援に投入され、約7800万人の被災者の手に必要な物資やサービスが届けられている2。こうした国際社会の介入にもかからず、人道危機が一向に改善されていない国々がある。人道危機の発生に関する研究は大きく2つに分類される3。第一に、国際社会の人道危機1 Y, Glyn, et al., The State of the Humanitarian System, ALNAP and ODI, London, 2012.2Development Initiatives, Global Humanitarian Assistance Report 2014, 2014.3中村長史「人道主義のパラドックス冷戦終結後の人道危機対策再考」『平和研究』第43号,201417