ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

や法の支配等のように社会変革を伴う支援を実施するとともに、能力開発やオーナーシップ等の開発アプローチを導入し、長期開発支援への移行を円滑に進めるための仕組みを構築してきた21。このように、国連は統合によって各支援領域の連携を強化する一方、早期復興によって緊急人道支援から長期開発支援まで、切れ目ない効果的な支援体制を構築してきた。こうした改革の背景にあるのは、現代の武力紛争の根源的原因は、紛争当事者間の軍事的バランスだけでなく、脆弱なガバナンス、人権侵害、貧困等、政治的・経済的要因も含んだ複合的なものであるという認識である。国連は、人道危機も含めたこうした非軍事的な要因も安全保障化することによって、軍事、ガバナンス、開発という、これまで人道主義とは明確に区別されてきた3部門との一貫性のある支援活動を構築してきたのである。このようにして、国連は人道活動を平和構築活動に組む込み、人道活動の政治化を進めてきた。国連と同様、ドナー国においても、国防、外交、国際協力等の関連省庁間の連携を進め、より統合的な戦略を強化するとともに、人道支援の形態や方法の改革を行ってきている22。これまでの人道支援は、公平性の観点から、被災者のニーズに基づき実行されてきたが、上記した紛争の根源的原因に言及し、紛争予防の観点から、「ひも付き(Conditionality)」の支援を行う動きも見られるようになった23。また、国連と同様、人道支援から開発支援への切れ目ない移行の重要性を指摘した。経済開発協力機構開発援助委員会(OECD/DAC)の『DACガイドライン:暴力的紛争の予防促進』はそれを表すガイドラインといえよう24。3. ICRCの対応1)人道原則の遵守国際人道法において、ICRCは人道原則に則り人道支援活動を行うことが求められている。ジュネーブ諸条約並びに2つの追加議定書のいくつかの条項において、ICRC等の救援組織は「公平」な救済活動を展開することができると規定されている25。一方、これらの条約ではICRCの「中立性」と「独立性」については言及されていない。しかし、国際赤十字赤新月運動規約第5条において、ICRCは中立かつ独立な機関として、紛争犠牲者の保護と支援の任務にあたると規定されている。従って、国連人道機関と異なり、ICRCは同規約に基づき、「人道」と「政治」を明確に区別し、公平性だけでな21UNDP, UNDP Policy on Early Recovery, 2008.22中満泉「平和構築と国連改革有効な戦略の確立へ向けて」『国際安全保障』第34巻,第2号,2006年,19-23頁.23de Torrente, N.,“Humanitarianism Sacrificed: Integration’s False Promise,”Ethics &International Affairs, Vol.18, No.2, 2004.24OECD-DAC, The DAC Guidelines Helping Prevent Violent Conflict, 2001.25ジュネーブ諸条約共通3条、第1条約から第3条約の各第9条、第4条約第10条、第1追加議定書第70条、第2追加議定書第18条において公平な救済活動に関する条項がある。22