ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

く、中立性と独立性を確保し、人道支援活動を行うことが求められていることが分かる。2)「同意」の獲得人道支援要員の安全と人道アクセスの確保のために、ICRCは「安全の7つの柱」(受容、身元証明、情報の収集・共有、安全規則、人間性、通信、防衛手段)の遵守を求めている26。このうち、ICRCは、人道原則に基づく活動を実行する上で、紛争当事者や地域住民からの同意(Acceptance)の獲得を重視している。当局あるいは紛争当事者から活動の同意を得ること自体は、国連総会決議46/182でも言及されているように、新しい安全対策ではない27。しかし、同意の取り付けは当局あるいは紛争当事者間に留まるものではない。紛争当事者から確固たる同意を得ることが困難な国内紛争では、戦闘にかかわらない文民との対話も重要である。実際、ICRCは現地社会の政治家や有力者等、あらゆるステークホルダーとの対話を粘り強く重ねることによって、支援活動への理解を促進し、長期にわたる現地でのプレゼンスを確保している28。(4)考察前節では、紛争当事者による人道支援の妨害に対し、国連やドナー国が軍事、ガバナンス、開発の各部門の活動との一貫性を考慮しながら人道支援を行う一方、ICRCは人道原則に基づく支援を堅持していることを指摘した。本節では、各人道機関がなぜ異なった政策を実施しているのかを人道主義の系譜から考察するとともに、両者の人道主義をめぐる主張の比較を行う。1.人道主義の系譜1)古典派人道主義人道主義の系譜を概観する前に、まず人道機関が現場で活動する際の指針となる人道原則に言及する必要がある。国連人道機関、国際赤十字赤新月運動、並びに多くのNGOは、1965年の第20回赤十字国際会議で採択された『赤十字の基本原則宣言』の中に明記されている、「人道性」、「公平性」、「中立性」、「独立性」を行動規範としている。元ICRC副総裁のジャン・ピクテはそれぞれの原則を以下のように定義している29。「人道」とは、被災者の命と健康を守り、苦痛を軽減し、人間の尊厳を確保することを意味する。「公平」とは、国籍、宗教、政治的意見等の相違による差別をせず、ただ被災者の苦痛(ニーズ)に従って支援を提供することをいう。「中立」とは、戦闘行為への26Brugger, P.,‘ICRC Operational Security : Staff Safety in Armed Conflict and Internal Violence,’International Review of the Red Cross, Vol.91, No.874, 2009, pp.431-44527A/RES/46/182参照28UNOCHA, To Stay and Deliver: Good Practice for Humanitarians in Complex SecurityEnvironments, 2011.29ジャン・ピクテ著/井上忠男訳『解説赤十字の基本原則人道機関の理念と行動規範』第2版,東信堂,2007年.23