ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

b図2作製した動画教材(冒頭部分)(4)考察電界撹拌法は、手術中の迅速病理診断に、通常は時間のかかる免疫組織化学法を導入するため、抗原抗体反応を短縮することを目的に開発された。病理検査での利用のため、特定のマーカーに関しては、5分間で抗原抗体反応が終了する反応条件のプロトコールが整備されている。今回の電界撹拌法による抗体の組織の浸透性に関する検討では、通常の振盪法では3日かかる浸透距離が、6時間の反応で得られることが明らかになった。肝小葉全体の抗体浸透にはまだ遠いが、さらに反応時間を長くすることによって、抗体浸透距離が延びるものと考えられる。しかし、もともと電界撹拌法の装置が、薄切切片上の抗原抗体反応の短縮を目標としたものであるため、現状の装置では通常のスライドグラス向けになっており、厚みのある試料に対応する仕様となっていない。装置の設定時間も、99分が限界となっており、180分、360分の反応は、それぞれ90分の反応を2クールおよび4クール実施した。今回は、スライドグラス上に撥水リングを添付し、その中に反応液を置いたが、組織の浸透性をよくするために、Triton Xのような界面活性剤を反応液に添加すると、界面活性剤の濃度が濃くなるにつれて表面張力が低下し、スライドグラス上に載せることのできる反応液の量が低下する。今回の実験では、立体的な試料であるため、薄切切片よりもやや濃度が高い0.4%のTriton X溶液を使用したが、この濃度で400μLの反応液を用いるのが限界であった。反応時間が長くなると、反応液の蒸発が進むため、360分の反応では、2mm厚の試料の上面ぎりぎりまで反応液が減少しており、これ以上の反応には反応液を追加する必要があった。しかし、反応液の容量に応じて、電極間の距離と電圧が設定されるため、反応液を追加ると液量の正確な把握が困難になり、反応条件の規定に問題が生じる状況であった。立体的な試料では、現状市販されている装置では使用に問題があり、試料の厚さに対応した反応溶液を入れられる容器を用意し、その容器で電界撹拌を行うことのできる装置の開発が必要であることが明らかとなった。37