ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

近年では、「重い精神障害のある人を対象とし、ケースマネジメントの手法を用い、利用者の関係性を大切にしながら24時間、365日途切れないサービスを精神保健福祉士、看護師、作業療法士、精神科医など多職種チームにより提供し、リカバリーを志向し利用者を支援する」(三品、2013)ACT(包括型地域生活支援)と呼ばれるプログラムがある。ACTガイド(NPO法人地域精神保健福祉機構、2010)によると、ACTの実践に必要な技術や姿勢としてストレングスを挙げており、ストレングスは精神障がい者が自宅など地域での生活を支援する際の重要な概念の一つである。大迫ら(大迫ら、2008)の研究では、ACTでのストレングスに基づく支援を行うことで、自宅で生活する利用者は「自信の回復」「活動の広がり」「服薬の開始」という変化が生じたとの報告がされている。以上のように、ストレングスを高めるケアは、地域で生活する精神障がい者が一日でも長く住み慣れた自宅で質の高い生活をサポートするのに必要な概念でありケアであると考えられる。しかしACTは人材確保や財源の確保などの課題があり、制度化されておらず、全ての地域で受けられるものではないこと。さらに、ACTは訪問診療を含めた保健・医療・福祉という異なった領域サービスであるなど、特殊性が強いことより、現状では精神科訪問看護が重要な役割を担っていると言える。精神科訪問看護のケアの実際を概観すると、精神科訪問看護で提供される具体的なケアに関して瀬戸屋ら(瀬戸屋ら、2008)による研究では、「日常生活の維持/生活技能の獲得・拡大」「対人関係の維持・構築」「家族関係の調整」「精神症状の悪化や増悪を防ぐ」「身体症状の発症や進行を防ぐ」「ケアの連携」「社会資源の活用」「対象者のエンパワーメント」という8つのケアが明らかにされているものの、ストレングスの視点での結果は得られていない。ストレングスは、利用者である個が持っている「個のストレングス」と、「環境のストレングス」がある。看護では環境について「通常内的および外的に人に影響を与えるすべての因子を含む。」(Craven/楊箸訳、1992/1996)と述べているが、定義は曖昧な現状である。また、ストレングスの中の環境のという意味で白澤(白澤、2009)によると環境のストレングスとは、「地域社会には利用者の生活を支えるために可能な資源が多数存在しているとするものである。これには家族や近隣に限られず、地域の団体の役員、ボランティア等が含まれる。」と述べており、「環境のストレングス」に含まれる社会資源や社会関係などは利用者のリカバリに重要であると考えられるが、ストレングスの研究の中で、「環境のストレングス」に焦点化した研究は少ない実態である。以上のように、利用者のリカバリのプロセスの中における環境のストレングスを帰納的に明らかにすることは重要であると考えられる。そこで本研究は、地域で生活する精神障がい者が、リカバリのプロセスを歩む中で、住みなれた地域でより質の高い、在宅を中心とした生活を継続していけることを研究の意義として、精神科訪問看護師(以下、訪問看護師)が捉えた精神科訪問看護利用者(以下、利用者)の「環境のストレングスの種類」41