ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

にトマトを植えてそれで毎日水をやったりね、草を取ったりとかで体をもっと動かす機会を増やそうというようになって、トマトを作って最近は収穫してるんで一緒に食べているんです」という環境のストレングスとして捉えた理由に代表されるように、「畑がある」として捉えるだけではただの環境に過ぎないが、訪問看護師は「畑を彼(利用者)にとっての環境のストレングスだと前から思っていたんですよ。」「体をもっと動かす機会を増やそうというようになって」というように、日々の訪問のなかで常に現在の利用者に必要で、使うことのできる環境を意識しながら、何等かのアプローチの機会を図り訪問看護を展開しているといえる。(2)活用の仕方で強みにも弱みにもなる環境のストレングス環境のストレングスは相反するものであり、使い方一つで弱みにもなるものである。例えば「こもれる部屋がある」というのは、安全基地としての環境にもなり得るが、一方でこもれる部屋があることにより、引きこもりがちになり利用者の活動性を低下させるという環境にもなり得る。浅野(浅野、1998)は主体と環境は相互作用の中で双方を成り立たせていると述べ、同じく浅野(浅野、1998)は「環境とは、主体にとって肯定的ないし否定的な何らかの意味をもった事象の総和といえる。」と述べている。訪問看護師は、利用者への必要性や、利用者の現状を常に把握しながら活用していくことが重要であり、環境を単なる環境とするのではなく、環境のストレングスとして、利用者のリカバリに意味のあるストレングスとなり得る環境としてアンテナを張りめぐらすことが重要であると考える。3)家族ケアの重要性本研究結果では、環境のストレングスの種類の一つに【家族の存在】がある。利用者視点で捉えると家族は環境のストレングスとして存在する。一方で、環境のストレングスと捉えた理由から考えると、《補完してくれる他者の存在》には、「(家族は)最終的に彼(利用者の)力になってくれる」という〈支えての存在〉や、「薬を貰ったら薬を全部カレンダーにセットしてくれる」というように〈病気・症状が増悪しないための管理〉という理由から利用者の環境のストレングスと捉えている。さらに、「(利用者は)飲んだくれてお兄さんを叩いたらしいけど、でもお兄さんは全然そんなこと気にしない」という〈受け入れられる体験〉が利用者にとっての環境のストレングスと捉えられている。しかしこれらは、利用者中心の考え方であり、家族が利用者のための資源であり背景と捉えられる危険性も含んでいる。鈴木(鈴木、2012)によると、家族が家族看護を必要とする場合の一つとして、「家族が、家族成員の健康問題の予防・回復・健康の保持・増進に重要な役割を果たしている場合に家族看護を必要としている」と述べていることから、利用者の家族も利用者の回復過程に身を置いているならば、ケアを必要としていると考えることができる。このように、【家族の存在】が一つの環境のストレングスにもあり得るが、場合によっては利用者や看護師からの過51