ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

度の期待に応じなくてはというストレスや、負担にもなり兼ねない。家族はシステムでもあり、鈴木(鈴木、2012)によると家族システムの特性の一つに循環的因果関係があり、「1家族成員の行動は家族内に次々と反応を呼び起こす」と述べている。つまり、利用者が安定したとしても、利用者を支える家族が負担を感じ家族システムがバランスを崩すと、利用者もおのずと負担がかかることになる。以上のように、【家族の存在】は利用者の環境のストレングスとしては重要であるが、一方で家族へ過度の期待がかかり負担となり、結果的に利用者のバランスも崩れることになり兼ねないゆえ、家族自体へのケアも重要である。(5)結論訪問看護師が捉えた利用者の「環境のストレングスの種類」の類型化と訪問看護師が利用者の「環境のストレングスと捉えた理由」を明らかにすること目的に質的・帰納的に分析した。結果、看護師が利用者の「環境のストレングスと捉えた理由」は11のカテゴリと23のサブカテゴリが形成された。「環境のストレングスの種類」は、【家族の存在】【社会の人々の存在】【ピアの存在】【専門職者の存在】【居場所の存在】【ユニバーサルな社会資源の存在】という6つの環境のストレングスに類型化された。考察として、訪問看護師が捉える環境のストレングスは「人的環境」「物的環境」「社会的環境」に区別でき、人的・物的環境はそれぞれ社会的環境の要素も含まれ、最終的には社会的環境につなげていた。訪問看護師は、日々の訪問のなかでどのような環境が環境のストレングスとなり得るかを常に意識しながら、利用者のリカバリに意味のあるストレングスとなり得る環境についてアンテナを張りめぐらせ、何等かのアプローチの機会を図ることが重要である。また、環境のストレングスとしての家族を利用者の背景や資源とするのではなく、家族自体へのケアの重要性も示唆された。(6)謝辞ご多忙にもかかわらず面接に応じて下さった精神科看護訪問看護ステーションの皆様に深謝いたします。また、同行訪問に快く応じて下さいました訪問看護利用者の皆様に深謝申し上げます。本研究は、「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」による研究支援事業「精神科訪問看護利用者とその家族のストレングスに関する研究―精神科訪問看護師の視座より―」(研究者:磯野洋一)により実施した。(7)引用文献浅野慎一(1998).序社会環境と人間発達.社会環境論研究会編社会環境と人間発達(初版).(pp.3-18).岡山,大学教育出版.52