ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

訪問看護師の実践として、患者との信頼関係を有しているため、終末期の意思決定支援を実践するうえでのファシリテーターとして適任であること(片山, 2014)、死を肯定的に捉え(久山・吉岡, 2014)、病棟看護師と比較して死の看取り満足度が高い(横尾・吉原・松島他, 2010)ことが挙げられている。以上より、終末期がん患者への熟練訪問看護師の支援は効果的であるといえる。この熟練訪問看護師による効果的な支援をより確実に提供していくために、終末期の意思決定支援がより適切にできる状況を捉えることが重要となる。しかしながら、日本における終末期がん患者の死亡場所の意思決定支援に関連する要因を検討した研究は、一般病棟の看護師要因を対象にしたものが多く(早瀬他, 2008;河野,2014;大川・吉田・藤田他, 2006;吉田・藤田・大川他, 2006)、訪問看護師の関連要因の研究は質的な研究のみ(松村・川越, 2001;吉田他)である。このため、包括的、多面的に訪問看護師のよりよい終末期の意思決定支援実施に寄与する関連要因を検討することが求められる。また、終末期がん患者の平均訪問看護利用期間は約1か月と短期間である(医療経済研究機構, 2006)。がん患者は、死の1ヶ月前頃になると、状態が急激に悪化し日常生活の遂行に困難を来し、最後の2週頃には苦痛を緩和するために多くの介護や処置が必要(恒藤,1999)とされており、訪問看護開始と同時に生活上の変化が見られ始めている、または既にみられているケースが多いことが推察される。そのため、患者や家族と人間関係の構築がなされる前から余命の告知の有無、余命の理解の確認をすることが求められることが少なくない。終末期がん患者が希望死亡場所を実現するためには、訪問看護師が訪問初期にアセスメントを行い、終末期の意思決定支援を実践することが必要となる。そこで、訪問看護師による終末期がん患者への意思決定支援と患者の希望死亡場所での死亡の実現との関連により初期アセスメントの重要性を明らかにすることを目的に、研究を実施した。(2)研究活動の方法1用語の定義1)死亡場所の意思決定支援アセスメントの重要性をはかる指標として、意思決定支援を用いることとした。本研究では、死亡場所の意思決定支援に着目し、1.予後理解を促す支援(1余命告知の確認、2未告知の対応、3余命の理解度の確認、4生活上に関する予後の説明)、および2.希望死亡場所の確認と調整(1希望死亡場所の確認、2家族調整)の2側面に焦点をあて、これらを死亡場所の意思決定支援と定義した。a.余命告知の確認告知には、「病名の告知」、「不治の告知:治癒の可能性(質的予後)」、「余命の告知:余命の予測(量的予後)」がある(田代他, 2013)。本研究では、主に医師が役割を担う56