ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

表6.対象者別の生活上に関する予後の説明と希望死亡場所での死亡の実現との関連n= 363人数(%)オッズ比95%信頼区間下限上限説明なし52 (14.3)1.00患者のみに説明あり4 (1.1)---患者と家族に説明あり131 (36.1)3.721.578.78家族のみに説明あり176 (48.5)1.790.853.76Hosmer&Lemeshow:.569、モデルχ2検定:p<.001、判別的中率:74.5%希望死亡場所の実現とp<.10の関連のみられた変数で調整したロジスティック回帰分析調整変数は、以下の変数である。(1)看護師要因:1年齢、2性別、3アセスメント用の書式の有無、4看護師全般の通算経験年数、5患者と訪問看護師との関係性、6家族と訪問看護師との関係性(2)医師要因:変数なし(3)患者・家族要因:7原発疾患(肝臓、胆のう、膵臓)、8予後予測のしやすさ、9家族のコミュニケーション障害、10臨死期の患者の自宅療養の不安、11臨死期の家族の自宅療養の不安、12臨死期の介護負担、13臨死期の患者のがん治癒に向けた治療への姿勢、14患者の病院医療の限界についての理解、15患者への余命の告知の有無従属変数は、希望死亡場所での死亡の実現「あり」=1、「なし」=0とする。(4)考察1訪問看護師による死亡場所の意思決定支援の実態本研究において、患者への余命の告知があった割合は29.4%であった。日本のがんの余命告知率を調査した結果では、2005年は9.0%(田中他, 2007)、2013年は24.5%(田代他, 2013)であったことが報告されており、本研究の結果はこれをやや上回ったものの、いまだに患者への余命の告知は進んでいない現状が明らかになった。余命の告知が自宅死亡実現に関連するとの報告がある(Aabom, Kragstrup, Vondeling, et al.et al.,2005; Chen, Lin, Liu, et al., 2014;谷口他, 2005)。田中他(2007)は、余命の告知により残された人生の目標を持ち、それを達成すべく行動していると述べている。これらのことからも、患者の希望死亡場所での死亡の実現のためには、予後理解を促す支援が必要である。予後理解を促す支援には、「生命予後」についての側面である医師が行う余命の告知と、「生活上に関する予後」についての側面がある。「生活上に関する予後」の説明は、看護師もその役割を担うことができる支援である。そのため、医師からの告知を待つだけではなく、看護師も予後理解を促す支援を実施することが重要であろう。本研究で訪問看護師が実施した死亡場所の意思決定支援の実態を調査した結果、患者に対して余命の告知の確認をしたのは79.7%と多かったが、余命の理解度の確認をしたのは訪問全時期を通じて58.3%で、生活上に関する予後の説明をしたのは37.7%にとどまった。看護師による余命の理解を促す支援の実践状況を調査した研究は、研究者が検索し得た範囲ではみあたらないため、先行研究結果と比較することは出来ない。川越(2013)は、「そろそろお迎えがきたのかな」というような理解をする患者には、あえて告知をする必要はないと述べていることから、生活上に関する予後の説明をする必要がない患者も存在したと考えられる。しかし、本研究の結果、臨死期において余命を理解していた患者は34.8%と低かったことを考慮すると、生活上に関する予後の説明の必要65