ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

性がある患者に対しても、説明がなされていなかった可能性があり、本研究における予後理解を促す支援の実施割合、特に生活上に関する予後の説明は低いものであったと推察する。2生活上に関する予後の説明と希望死亡場所での死亡の実現との関連訪問看護師が患者に対して実施する死亡場所の意思決定支援のうち、予後理解を促す支援の実施は、低い割合であった。予後理解を促す支援には、「生命予後」についての側面である医師が行う余命の告知と、「生活上に関する予後」についての側面があり、「生活上に関する予後」の説明は、看護師もその役割を担うことができる支援である。しかし、実施の割合が低いことからも、生活上に関する予後の説明は、難しい支援であることが伺える。これを実施するためには、患者に対してのアセスメントを適切に行うことが重要である。訪問看護師が生活上に関する予後の説明を複数回実施することが、希望死亡場所での死亡の実現と関連していた。Barnett(2006)は、患者は診断をよく理解しているが、多くは完全に彼らの予後を理解していないと述べている。本研究においても、患者に対して余命の告知がされていたのは29.4%にとどまり、そのうち訪問初期に患者が余命を理解していたのは25.4%、臨死期には34.2%であり、全員が余命を理解できていなかった。そして、生活上に関する予後の説明を1回実施することは有意な関連要因ではなかったことから、複数回実施することが有用であると考えられる。複数回の生活上に関する予後の説明を実施するためには、臨死期以外にも行う必要がある。本研究では、訪問初期、悪化期、臨死期の3時点で調査した。廣畑他(2007)は、A訪問看護ステーションで訪問看護を行った過去1年間23例の死亡者の看護記録を後ろ向きに検討し、安定期の時から最期をどのように迎えたいのかを一緒に考えておくことは重要であると報告した。患者の状態が悪化期に入る前から死亡場所の意思決定支援を行う必要性を述べている。Temel, Greer, Muzikansky, et al.やChan et al.は、緩和ケアを早期に実施するという介入研究により、患者および家族のQOLの向上がみられたことを報告した(Temel et al., 2010; Chan et al., 2014)。彼らの緩和ケアの介入内容には、疼痛の緩和に加えて、患者が予後を認識し、終末期に向けた医療や過ごし方を意思決定するためのコミュニケーションプログラムが含まれていた。これにより適切な時期に抗がん剤での治療の中止、終末期近くの積極的な治療の減少、そして希望死亡場所の表明といった効果が得られていた。つまり、緩和ケアの内容には死亡場所の意思決定支援が含まれる必要があり、死亡場所の意思決定支援を早期に行うことで、患者および家族のQOL向上の効果につながる、希望死亡場所での死亡の実現となる可能性が高くなるといえよう。終末期がん患者の在宅療養期間は約1か月と短期間であり(医療経済研究機構, 2006;66