ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育・研究事業報告書

島内・鈴木, 2008)、がん患者は、死の1ヶ月前頃になると状態が急激に悪化し、日常生活の遂行に困難を来し、最後の2週頃には苦痛を緩和するために多くの介護や処置が必要となる(恒藤, 1999)。そのため、訪問看護開始と同時に生活上の変化が見られ始めている、または既にみられているケースが多いことが予測される。訪問初期から死亡場所の意思決定支援を実施しないことによる問題は2点あげられる。第一に、患者本人の意思を知ることができない可能性が高くなることである。Silveira, Kim, & Langa(2010)は、終末期患者においては、意思決定が必要な時に76.6%が意思決定能力を持っていないことを報告している。第二に、一時的な症状悪化の際に入院したまま退院できず、病院で死亡する可能性が高くなることである。杉谷・吉岡・吉川他(2011)は、死亡場所の意思決定ができていない段階で状態が悪く入院をすると、患者や家族は選択を病院に任せてしまうと述べている。終末期がん患者を自宅で支えていくためには、訪問看護は24時間体制で支えていくことが不可欠である。訪問看護では夜勤は当番制で、受け持ちではない患者の対応をせざるを得ない。患者が自宅死亡の希望を明確に表明していない場合には、身体症状のみの判断で緊急入院となる可能性が高くなる。予備調査(インタビュー調査)の結果において、「私たち(訪問看護師)が、そこ(生活上に関する支障の出現)のタイミングでまず介入していかないと、家族は不安で、すぐ病院へ入院になったりする。」と述べられている。訪問初期から対応をしていかなければ、患者の希望死亡場所を確認し、調整していくことは不可能となってしまうかもしれない。以上より、訪問看護を利用する終末期がん患者は、訪問初期から対応をしていかなければ、訪問看護師は患者の希望死亡場所を確認することができず、希望死亡場所での死亡の実現に向けた支援の提供は不可能となってしまう。したがって、希望死亡場所での死亡の実現のためには、訪問初期の早期から対応をすることが求められる。そのため、終末期がん患者の希望死亡場所での死亡の実現のためには、訪問看護の現場において訪問初期からのアセスメントを適切に実施し、生活上に関する予後の説明を行っていくことが重要であることが示唆された。(5)結論本研究における、訪問看護師による終末期がん患者への予後理解を促す支援の実施割合特に生活上に関する予後の説明は低いものであった。生活上に関する予後の「説明なし」に比べ、「複数回の説明あり」のほうが、希望死亡場所での死亡の実現と関連した。複数回の説明のためには訪問初期からのアセスメントが必要であることから、終末期がん患者の希望死亡場所での死亡の実現のためには、初期アセスメントが重要である可能性が示唆された。67