ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

しかし、これらの課題は急に浮上したわけではなく、1980年代に稲岡らによるバーンアウト研究に代表され、今日に至るまで、看護師のストレスの要因分析やストレスを測定するための尺度開発、ストレスマネジメントに関して数多くの報告がされてきた。それらの多くは、実態調査にとどまり具体的な対策の提示がない報告(板野ら、2004)や、人的環境を含めた職場環境の提供や調整、対象である看護師個々への関り方などのラインケアや組織的支援を中心としたメンタルヘルス対策の報告である。組織的に働きやすい職場環境の醸成も個々の安心や安定をもたらし、メンタルヘルスの改善につながる点では重要であるが、今後は看護師自身が自己のメンタルヘルスのための行動がとれるようになることが重要であると考える。そこで、看護師の抑うつ状態が高率であることに着目し、うつ病に対する効果が立証されている認知行動療法(松永、2006)を用いて看護師のメンタルヘルスのためのプログラムを開発する。認知行動療法の発案者であるBeckは、抑うつ状態は出来事ではなく、その出来事をどう解釈するかと言う認知によって引き起こされると述べている(1976)。換言すると、私たちは現実を自分では客観的にみているつもりでも、知らず知らずのうちに自分なりの見方、受け止め方、つまり「認知」をしており、それによって抑うつ状態が引き起こされていることになる。そのため、その人の認知と行動の両面から改善するための総合的な心理学的アプローチである認知行動療法(伊藤、2008)を用いたプログラムが有用であると考える。特に、新卒看護師(看護基礎教育課程を修了し、看護師資格の取得後1ヵ月以内に病院に就職した1年以内の看護師)は抑うつ状態に陥りやすいことが示唆されている(藤原ら、2008)。そこで、うつ病に対する効果が立証されている認知行動療法(松永ら、2006)を用いて、抑うつにつながる思考や情動をセルフコントロールすることで、抑うつを予防できるように新卒看護師を対象としたプログラムの開発に取り組む。(2)研究方法1研究対象者日本赤十字広島看護大学の研究倫理審査委員会での承認(1416)を得た後に、中四国地方の総合病院の看護部長会で研究の趣旨および倫理的配慮について書面を用いて説明し、看護部長の同意が得られた3病院での倫理審査を受けて開始した。研究対象者は、同意が得られた病院の新卒看護師81名とした。研修会に参加した新卒看護師に対して、研修開始前に研究の趣旨及び倫理的配慮、特に研修会に参加してもアンケート調査への協力は個人の自由意思であり、かつ不利益を被ることがないことについては書面と口頭で十分に説明し、アンケート調査用紙の投函をもって研究への同意が得られたものとした。120