ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

動療法の実践につながると考える。そのため研修会で効果を実感できるような介入を行うことが必須となる。このことについては、大学生を対象として行った認知行動療法による抑うつ感軽減・予防プログラムにおいて白石(2005)も同様の指摘をしている。さらに、約80%の新卒看護師が認知行動療法を理解できたと思っていても、「反証が出てこない」「根拠を考えるのが難しい」「自分で答えを見つけるのが難しい」と実際に認知行動療法を一人で実施することによる困難感やストレスが生じている。一方で、集団で実施することにより「自分では気づけなかったけど言ってもらえて気づけた」「いろんな見方があることが分かった」等、多角的視点から見直せるため、一人で実施するより負担感が軽減する可能性が考えられる。反証を考えることへの困難感が軽減できるように、当初は集団で実施し、反証を考えることができ適応思考を見つけ気分が変化する体験を繰り返すことで動機付けを行うと同時に、負担感の軽減を図ることで一人で認知再構成法を行うようになる可能性が考えられる。2BDI-Ⅱの推移平均値は、高い順に3回目の15.7点、1回目の14.4点、2回目の13.2点であるが、中央値は、高い順に1回目の15.0点、3回目の14.0点、2回目の12.0点、であった。これは、3回目のほうが重症化する新卒看護師が増えているためと考えられる。しかし、平均値の差には有意差が認められないため、3回の抑うつ度には差があるとはいえない。本木ら(2010)は、Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)日本語版を用いて、新卒看護師の抑うつ変化を就職後3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月で比較し、抑うつ度の平均値が3ヶ月・6ヶ月に比べて9ヵ月が有意に低下していたと結論付けているが、本研究の結果とは相違がある。これは、所属している組織に起因するものなのか、看護師のうつ状態を測定する尺度としてBDI-Ⅱが適切であったか等を再検討する必要がある。また、ATQ-Rと抑うつ対処の自己効力感は、各々P>0.05で有意差が得られなかったため、認知行動療法による介入は効果が得られなかったと考えられる。そのため、これらの抑うつ度は、自然推移として推察できるが、実際に対照群を設けることで、明確にしていく必要がある。3抑うつ状態と自動思考、抑うつ対処の自己効力感の判別分析重症化した群において、抑うつ対処の自己効力感での影響を及ぼした下位尺度項目の客観的・多面的評価は、本プログラムの適応思考を身につけることで改善する可能性が見込まれる。しかし、本研究の結果に鑑みると、これらの項目を選択する新卒看護師に対しては集団での介入を行うより個別の対応を検討することも視野に入れる必要がある。また、自動思考の下位尺度項目の、1消えてしまいたいと3私の人生はめちゃくちゃだは将来への悲観、2世間とは衝突している気がするは自己非難であり、これらは新卒看護師の日々の臨床での体験が影響していると考えられる。加えて、新卒看護師129