ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

ページ
132/152

このページは 平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書 の電子ブックに掲載されている132ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

のホームワークの実施率や認知行動療法に抱く困難感を考えると認知再構成法のみでなく、行動的介入として問題解決技法を活用することで効果を体験できるようにプログラムの構成を検討する必要性が示唆された。4プログラムの効果集団認知行動療法を用いた研修会を3回実施したが、抑うつ対処の自己効力感やATQ-R(自動思考)の肯定的変化に効果はなかった。しかし、大学生を対象として集団認知行動療法的介入を実施し、白石(2005)は抑うつ感の軽減、否定的自動思考および抑うつスキーマの変容に有効であることを実証している。さらに、及川ら(2007;2014)は抑うつ対処の自己効力感の肯定的変化や適応指標の否定的自動思考とストレス反応の低減を明らかにしている。山田ら(2011)もCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)の改善を認めている。加えて、東ら(2012)は、新人看護職員研修会に集団に認知行動療法の導入を図り、State-Trait Anxiety Inventory(STAI)日本語版により状態不安の軽減有効であることを示唆している。これらは、集団認知行動療法による介入の有用性を示しており、本研究の結果とは異なる。その原因として以下のことが考えられる。1上記の介入はいずれも1週間に1回の間隔で実施されており、本研究の3ヵ月から4ヶ月の間隔での介入では、間隔があくことで新卒看護師の内容理解の強化が図れなかった。2上記の東ら(2012)を除くプログラムの内容は、1回20~90分と開きはあるが、回数は8回程度である。東ら(2012)は1回120分で3回実施しており、本プログラムの1回90分~120分で3回と類似している。しかし、その他の介入プログラムと比較すると1回の内容が多くなっていることが考えられる。本研究に参加した約80%の新卒看護師が理解できたと答えているものの反証や適応思考の出しにくさを記述していることから、十分な理解に至らなかった可能性があるといえる。3一人で認知再構成法を実施することへの時間的身体的負担、ストレスや困難感がホームワークの実施率の低迷につながり、定着性が得られなかった。4実際に効果を体験すると興味が持て、動機づけられるが、本プログラムでは研究者1名が3~4グループ(1グループ5~6名)を担当することになる。これは、東ら(2012)の14名を2名で担当するのとは大きく異なる。つまり、各グループに十分な介入ができず効果を体験できた新卒看護師が限られた可能性がある。(5)結論新卒看護師81名を対象に集団認知行動療法を用いた抑うつ予防のための研修会を就職2ヵ月以内に初回を実施し、その後は3ヵ月~4ヵ月の間隔で2回、合計3回行った。3回の研修会に参加し、研究の同意が得られた51名を対象として、抑うつ対処の自己効力感とATQ-Rによるプログラム評価を実施した。その結果、いずれも有意差が得られず、効果があったとはいえなかった。今後は、対照群との比較も含めて検討していく必要がある。また、本プログラムの課題として、11週間程度の間隔で実施することで内容理解の強130