ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

7-1-4.調査対象者の防災デイキャンプ参加前後の防災認識の変化防災キャンプ参加前後で有意に変化した14項目中、以下7項目(「自宅の耐震診断を検討している」「地域で必要な防災品の備蓄の準備について知っている」「避難所はどんなときに開設されるのかを知っている」「避難所運営についての知識がある」「災害時要援護者とはどんな人を指すのか知っている」「災害時の死者やけが人に高齢者が多いことを知っている」「災害時に、高齢者、障害者や乳幼児がどのような支援を必要とするか知っている」「地域の街頭消火器や消火栓の位置を知っている」「消火栓や消防ホースを扱ったことがある」)については、防災キャンプに参加して得た知識および技術が即座に結果に反映したのではないかと考えられる。また、「緊急時に地域の住民同士で救出救助することができると思う」「地域で頼りになる人がいる」「地域で防災について相談できる人がいる」「職場の人や知り合いに地震に対する備えをしている人がいる」については、自分自身を含めた参加者が、共に防災教育を受けていることへの肯定的評価の表れと考えてよいであろう。神戸市消防局が約500名の地域住民を対象に実施したアンケート調査では、地域力の要素である「人と人とのつながり」が豊かな地域ほど災害時要援護者の避難支援ができると回答する率が高く、地域力が高い地域ほど防災力も高くなることが示唆されている(神戸市消防局)。人々の協調行動が活発化することにより社会の効率性を高めることができるという考え方のもとで、社会の信頼関係、規範、ネットワークといった社会組織の重要性を説く概念をソーシャル・キャピタル(Social capital)というが、今回の「赤十字みんなの防災デイキャンプ」においても、その活動を通じて参加者の間に連帯感が生まれ、それらが自己および他者肯定感を高めた可能性がある。また、避難訓練実施計画者、担当者への信頼性や好意度が訓練への参加に影響することが明らかにされている(細江,小野澤,細越,2003)ことから、防災キャンプを企画・運営した本学および日本赤十字社秋田県支部の存在が、参加者へ安心感や信頼感を与えられたのだとすれば、それらの思いが、認識の変化につながったとも考えられる。この意味からも、今後も継続して地域の各団体と連携し、地域住民間のつながりを密にする試みを展開し、地域の防災機能強化をめざすことが重要であろう。災害への対策能力である「防災力」に関しては、実際に災害が起こってからでなければ本当の検証ができないという難しさもあり、多くの研究が,その評価指標の具体的活用方法について言及しておらず、その評価指標を作成したことによって,現実の地域防災力向上にどのようなインパクトがあったのかについても既存研究は全く言及していない.本研究で用いた評価指標についても妥当性、信頼性が検討されているものではないという限界はある。地域防災力評価は,あくまで地域防災力を向上させるための「手段」であり,評価そのものが目的になってはならないと指摘されている(永松,長坂,臼田,池田2009)ことは忘れてはならないが、地域防災への取り組みがどのように住民の行動に影響したのか30