ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

ページ
35/152

このページは 平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書 の電子ブックに掲載されている35ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

4.キーワード慢性腎不全、援助モデル、個別化医療、アクション・リサーチ5.研究報告(1)研究の背景・目的高齢化社会が到来し、慢性疾患をもつ人が増加する中で、慢性疾患をもつ人と家族に対する質の高い援助が求められている。腎疾患をもつ人も年々増加傾向にあり、腹膜透析や血液透析を導入する人が増えている。血液透析を導入した人に比べて、腹膜透析を導入した人を対象とした研究的な取り組みや援助の解明は、あまり行われていない現状である。急性期病院で透析を導入し、通院治療を続ける患者と家族は、自立度が高いことからもこれまで十分な医療者の関わりがなされてきたとは言い難い。腎不全患者や家族への援助には多くの課題が積み重なっていると思われるが、これまでの研究では、かゆみなどの症状緩和の対策(柿本・内田・尾崎他,2010)、患者の自己管理方法に焦点をあてた研究(野坂・中谷,2012)等がなされている。さらに腹膜透析に関しては、家族を対象に治療への協力体制形成過程に着眼した研究(持田・青木・森山,2012)はある。しかし、いずれも医療者の視点にたった研究が多く、当事者の体験という視点からの研究とそれに基づいた援助方法に関する研究は少ない。著者らは、これまで大学教員と臨床で透析患者のケアにあたる看護師との協働で、透析療法(血液透析および腹膜透析)を導入した患者と家族への援助モデルの構築を目的に、その第一段階として、患者や家族の体験を明らかにする研究に取り組んできた。そして、これらの体験を踏まえた援助モデルを検討している。本研究は、これまでの著者らの明らかになった患者と家族の体験を踏まえて、透析看護に関わる実践家と協働して、「腎不全を抱える患者・家族の個別ニードに即した援助モデルの構築と評価」の検討を試みることとする。腎不全医療をめぐっては、地域の医師や看護師などの多職種協働による新しい援助体制の構築が求められている。赤十字病院は、地域の医療拠点として地域の医療機関との連携を取りながら腎不全に関してその予防からエンドオブライフケアまで含めた包括的な医療体制を検討していく必要がある。日本赤十字社医療センターでは現在、腎不全を抱える人々への援助は個人の価値や意味を重視した個別化医療が重要であるとの理念を掲げて、腎不全患者、家族への地域包括医療モデルの検討を進めている。本研究では、大学と日本赤十字社医療センターとの協働によるアクション・リサーチの手法を用いて、人道を基本理念に個人のニードに即した個別化医療の展開に向けて、赤十字における腎不全患者への援助モデルを構築したいと考えた。(2)研究方法看護研究者と実践家が協働して遂行する研究方法であるアクション・リサーチの研究方法を用いる。アクション・リサーチは、「実際のヘルスケアの現場における問題を明確にし、可能な解決策を探るために行う協働的介入」(Alison Morton-Cooper, 2000/2005,p.19)と33