ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

5)面談時の工夫面談を継続していくためには、個々の患者・家族の特徴や疾患の受容段階に応じて、面談の方法を工夫していく必要がある。例えば、面談のタイミングとして、透析導入時期が病態として迫っている場合(eGFR15ml/min以下)は、面談が必須となるが、病態によっては面談を「待てる時期」もある。データ的にまだ「待てる時期」であれば、無理に面談をするのではなく、意図的に面談を行わない方法もある。そのような場合には、必要な時はいつでも看護師に声をかけてもらえるような関係性や体制を作りながら「待つ」ことが大切である。6)面談における看護の専門性個々の患者の育った環境や生きがい、価値観、家族の情報など様々な情報が、一つ一つ意味をもっている。そのような情報のもつ意味を看護の視点から捉えながら、療法選択やセルフケア援助へとつなげていくことが大切である。看護師は、臨床心理士とは異なる援助-未来の生活設計-という視点からアプローチし、患者や家族の心理状態に合わせながら、各々がイメージした人生設計を踏まえて未来を構築できるように、情緒的援助に留まらず様々な知識を用いて援助していく役割を担っている。(4)考察A.援助モデルの根底に流れる理念本研究結果から、多職種による「カンファレンス」は個々の患者のニーズを捉えるために多職種による多角的な視点や気づきが生かされていることが明らかになった。また、患者や家族の状況に応じて、様々なタイプの種類の「面談」を展開しながら、そのひとたちが体験していることを理解し、それに寄り添い、療法選択やセルフケア援助を展開していくことが明らかになった。このような「カンファレンス」や「面談」は、その根底には、「その人をよく知りたい」「個々に合わせた援助をしたい」という医療者たちの哲学があると考えられた。腎不全は、慢性病の1つとされている。慢性病の「病い」は、疾患(disease)や病気(illness)などで表現される。疾患(disease)は生物医学的モデルを基盤としているのに対して、病気(illness)は人間の体験が重視される(Lubkin&Larsen/黒江、2002/2007)。慢性病をもつ人へのケアでは、人間の体験を重視する「病気(illness))という用語が、近年用いられるようになった。本研究で明らかになった援助モデルも、「その人をよく知りたい」とその人に関心を寄せて展開される病いをもつ人の体験を重視した個別化援助をモデル化したものといえるだろう。B.多職種が機能するためのモデルとしての可能性このようにして患者や家族の個々のニーズや課題を捉えながら、医師、看護師、臨床心理士のなかで、「今、だれが関わるのが一番よいのか」という選択がなされ、援助に生かされているという特徴が見出された。本研究で明らかにした「援助モデル」は、多職種協働がうまく機能しているモデルの1つであり、今後多職種協働を活性化させるため40