ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

アのあり方や看護の視点は明確になっていない(井澤ら, 2009)ことがあると考えられる。また、特養の人員配置基準では、看護職員は定員130名までは3名とわずかである。日常生活援助のほとんどは介護職員が行い、また、家族への対応は生活相談員が窓口になっており、看護師は看取りケアを行う上で大きな役割が期待されながらも、ケアのあり方については看護師のみの判断で決めることはできない。施設としての看取りケアを模索する上では、施設内の多職種が協働することが必要であり、各職種の意見が十分に活かされるシステムが求められると言えよう。今回、特養の中で、施設内の様々な職種が構成メンバーとなる、看取りケアを改善させるプロジェクトチーム(以下プロジェクトチーム)を発足させ、2年にわたって、看取りケアに関する検討を行うとともに、その内容を施設内に周知するための活動を行った。本稿は、その活動内容とともに各職種がどのような役割を担ったのかを明らかにする。このことは、今後看取りケア体制を構築する特養が、効果的な多職種連携を行う上で有益な資料となると考える。なお本稿では、看取りケアを、臨終を看取ることだけではなく、医師によって回復の見込みがないと診断された高齢者が、その人らしさが尊重された死を迎えるための、看護職員・介護職員等で構成される多職種ケアチームによる援助と定義した。(2)活動の概要1)活動を行った施設中部地方の某市にある、特養Aホーム。某市は大都市に隣接した、大規模工場を抱える郊外型の都市である。2012年の高齢化率は14.7%であり、県内で高齢化率が最も低い市の一つである。Bホームは、多床室が主となるいわゆる従来型の特養で、定員が介護老人福祉施設80名、短期入所生活介護8名である。2)プロジェクトチームのメンバーと組織における位置づけプロジェクトチームは、施設長から指名されたメンバーで構成された。職種は、看護職員(看護師)2名、介護職員(介護福祉士・社会福祉士)6名、管理栄養士1名、生活相談員(社会福祉士)1名、事務職員1名であった。このうち2名が介護支援専門員の資格を有していた。チームリーダーは、看護職員が担った。プロジェクトチームの活動は、施設の業務であり、チームリーダーは活動内容を施設に報告する義務がある。また、チームで検討した内容は、施設管理者に報告され、施設が承認したものは実行される。3)プロジェクトチーム発足の背景Aホームは、2010年に看取りに取り組み始め、2011年は7名、2012年は6名、2013年は10名の高齢者が、施設内で死を迎えていた。しかし、これまでは施設内で高齢者の臨終を看取ることを実現することを目標にしており、自分達が行っている看取りケアの55