ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

ページ
72/152

このページは 平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書 の電子ブックに掲載されている72ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

している。以上、テキスト分析の結果を示してきたが、これらを取りまとめると、この資料から示された、人道に関連する主要な知見は、以下の通りとまとめられる。1赤十字看護の熟達者においては、人道は特別な原理のひとつととらえられている。2人道は、看護のめざすものと近いが同一の意味のものとは考えられていない。3人道の内容的としては、看護の技術・スキルというよりも、対人的実践と近い関係にあるとされている。4具体的には、人道は、患者との双方向の関わりのなかでの、態度や行動となって示される。つまり、人道は、社会的価値観やそれに基づく態度であるが、思うことだけではなく、関わりをもつ行動として具体的に示されるものと考えられている。<Ⅱ.川嶋みどり氏へのインタビュー調査>資料の分析ではなく、赤十字と人道、そして看護教育についてご意見を伺うことができる対象として、日本赤十字看護大学名誉教授で第41回ナイチンゲール記章の受賞者の川嶋みどり氏に、テーマを絞ったインタビューをすることでこれらの関連性と今後の課題を検討した。インタビュー日時は、2015年12月22日の午前・午後であり、日本赤十字看護大学遠藤研究室にて実施した。インタビュアは遠藤・島井であった。なお、この内容については、氏の著作物の内容なども参照して、別に報告することも企画しているが、本報告では、インタビューに基づいた結果をまとめる。なお、インタビューにあたっては研究の意図をあらかじめ説明して、参加を依頼した。逐語的な記録は参考資料にあげた。1)日本における人道の歴史日清・日露戦争の中での看護師養成ということを考えると戦争の中で必ずしも人道が十分に浸透してこなかった歴史がある。一方で、戦争こそが最も人道が求められるところでもある。そして、赤十字の人道にとっては、戦争が起きてからではなく、それを未然に防ぐということも重要だと思う。戦争の中での、人道は、人の命を守らなくなっては意味がない。教育の中では、命について学ぶことが欠けているのが問題である。2)看護と人道の関係看護における人道はケアリングであり、生命を守り、健康を保持し、苦痛を予防・軽減して、人間の尊厳を確保することである。そこには、安全と安楽というふたつの柱がある。このうち、安全は危険を未然に防ぐことも含まれる。また、安楽では、苦痛がないというだけではなく、人間らしく生きているかということであると考えている。大学の教育においても、この点が重要で、かつて人道がどこかに行っていたように、看護からケアリングがどこかにいってしまっているようにみえる。70