ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

3)人道の基礎人間の特徴として、人の役に立ちたいということがある。それが、家族のかたちでは、家族のなかでケアがあったが、産業の発展に伴い、家族で手に負えない部分を対応する病院ができ看護が生まれた。だから、看護も人間的な基礎に基づいた実践である。これを母親と赤ちゃんの関係でみると、赤ちゃんは母乳を吸って至福の時を過ごし、母親は赤ちゃんと全人的にケアし、その存在で夢をいっぱい抱く。この時に、どちらも恩返しは求めておらず、ケアする側もケアされている。人道支援も基本的に同じだと考えられる。4)人道の教育人道については、大学教育の中で特別に専門的に教えることはないのではないか。それは、基本的な人間性を養うということであり、あらゆる学科に共通していることであり、人道という教育するべき学問があるのではない。人道は物をあげること、してあげることではなく、人道を具現化する際には、連帯を欠くことはできない。すべての教師が、自分の学科の中で、人間の尊厳を頭に描いた話をしていかなければならない。教師と学生の関係もそうでなくてはおかしい。5)まとめ川嶋氏の基本的な姿勢は、人間が共通にもっている特徴を基礎に置いたものが、人間性であり、それに信頼するということであると考えられる。そのうえで、看護の実践家としての経験のなかで身につける「人道」というポジティブな価値観・態度である。その内容は、母子の例にあるように、相互的であり、どちらも見返りを求めないものである。一方で、現在の社会制度の中では、必ずしも、その理想のような関係を築くことは簡単ではない。看護の中でも、その実践が十分にはなされていないのが現状であろう。しかし、そこにこそ、行動の原理としての「人道」を強調する意味があり、おそらく絶えず努力し続けるべきものなのであると考えられる。教育の中では、カリキュラムの中に、人道を教えるための特別な授業が必要だとは考えられないという考えは当然であるだろう。むしろ、看護の実習の中でこそ、人道に思い至ってほしいというのが、川嶋氏の言いたいことであると思われる。この意味で、このまとめでは触れていないが、実習にあたって、看護学生が、ひとりも印象に残る患者さんに出会わない(出会いがない)ことがあるということこそが、危機的であるという話には共感した。この背景には、スキルの習得のためには、実習にあたって、さまざまな課題の提出を求めることが重要だという主張があると思われるが、ここで取り上げてきたように、スキルが、人道に基づく、確かな実践となるためには、実習の中でこそ、患者さんに助けてもらっている=教えていただいている経験をしてほしいと願う。71