ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

<Ⅲ.赤十字の看護大学生の調査>ここまで、赤十字看護の指導的な立場にある人たちの人道に関する考え方を見てきた。ここでは、見返りのない活動の例として、自発的にボランティア活動をしている学生が、その活動をどのように評価しているのか、また、このような自主的な経験には、これまで紹介してきた「人道」につながるものがあるのかについて検討した。対象は、海外の小学校での健康づくり活動のボランティアを経験したことのある学生9名であり、2~3名のグループでのインタビューとした。事前に研究目的と匿名性が保たれることについて説明し、参加は自由意思によるものであることも説明して、同意を得た。なお、これは教育学的研究であり、「人を対象とした医学系研究に関する倫理指針」の適用範囲外であるが、実施にあたっては指針を遵守して、データや個人情報の管理、インフォームドコンセントなどを実施した。協力の謝礼として、ボールペンを渡した。内容は、ボランティアに参加している学生は、その経験をどのように評価しているのか。また、それは人道という信念に基づいているのか。あるいは、赤十字での教育と結びついているのかについて、活動で自分が変わったところ、そのきっかけ、その変化が人生や生活に与える影響、赤十字の大学との関係、人道について、授業と考え方の関係というものであった。これらの項目について半構造化してインタビューを実施した。グループ内のメンバーは順不同で自由に答える形式をとった。結果は、表2にまとめて示した。ボランティア経験は、自分自身が成長したと思わせる経験であり、直接経験することで得られたと感じていた。この結果、それまでの自分について、見方が狭かった、考えが足りなかったというように捉えることにつながっている。この変化は、自己についての考えや感情では、基本的には、自尊感情が高くなっていると考えられた。この時に、ボランティア活動の中で、計画を立て、見通しをもつことが身に付いたという意見もあり、効力感が上昇していると考えられた。一方、対人関係の変化としては、知らない人たちとの交流によって、色々な人に先入観なしに接することができたり、他の人にやさしくなることができたりする経験となっていた。しかし、言葉も十分に通じないということもあり、その交流は十分に不快とはいいがたいと思われた。ただし、自分たちの活動が、果たして、相手のためになっているのだろうかということは、グループの中の話し合いでもかなり議論されているようで、ボランティアといっても、自分たちのための活動になっていないかという反省や、そういう側面があっても、やり続けることに意味があるという意見などがあり、一定の深まりが見られた。72