ブックタイトル平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成27年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

<学校での行われた心のケアが辛い気持ちを癒してくれる>講義が始まり、演習や実習も行った。通常の講義のほかに、「2カ月に1回くらいのペースで心理士さんが来てくれて、カウンセリングをしてくれた。これって、大事だった(Mさん)」。「震災後まもなくはPTSDになっていて、夢にも出てきて、周りの友人や学校の先生に相談したり、臨床心理士の方が学校に来てくれて話を聞いてもらった(Sさん)」。心のケアを1年くらいしてもらったおかげで「今、こうして、いろんなことを話せる容易になったし、前向きに考えることができるようになった(Sさん)」。通常の学業と平行して心のケアを受けることで、心理的に安定感を取り戻していった。(4)考察a.学生にとって教員の存在避難や小学校でのサバイバル生活、学業が再開するにあたり、学生にとって看護教員は学生を導く役割があった。地震の直後、学生は<普通の訓練と同じようにすぐ終わると思い、教室から校庭に移動して整列>していた。学生は自分たちで津波を予測して避難を決めることはなかった。<自分たちは整列していたら先生たちが話し合って避難の場所を決め一斉に走り出す>こととなり、避難を決断したのは、教員であった。避難に当たっては教員が主導し(田端, 2013)、学生が自分自身で避難を判断したり、動き出すことはない。看護学生達も、教員の判断を待っていたと考えられる。よって、学生にとって教員は避難を判断をしてくれる者を考えていたと言える。しかし、予想を大幅に超える甚大な災害が起こることが東日本大震災からの学びであり、今後の避難においては、教員が避難を判断するという考え方だけを訓練するだけではなく、学生が自分で判断し、身を守る訓練も必要であると考える。また、避難した小学校において学生にとって教員は、究極の状況の中で生きるために、何をすべきかを示す役割であったと考える。<先生とともに自分達学生は避難者の濡れた体を拭等できる援助をはじめ>、避難所で、教員は看護学生達ができることとして介護や高齢者の介助であることを明示し、学生たちに介護等を実施させることで、学生のこの避難所での役割を示した。これにより、学生は、寒さや恐怖におびえ、食べるものもない中で、生きようという気持ちを維持させたのだと考える。広瀬(2004,pp. 179-187)は、生命の危機がさしせまるようなサバイバル生活で生き抜くために、避難者の中での暗黙の救援者の指名があり、そこでの援助行動が重要であると述べている。看護学生達にとって援助行動は介護等であり、教員の助言が必要であった。その他に、教員は学生が学業に戻ることを支える役割があったと考える。学生は<授業再開を案じながら教員からの安否確認の連絡で学校の様子を聞>いており、この教員の学生への連絡が、学業への継続意識を持続させたと考える。阪神淡路大震災においても、看護学生と看護教員はこまめな連絡をしており(南, 1999)、学生の学業への継続意識を持た82