ブックタイトル平成28年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育研究事業報告書

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概要

平成28年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育研究事業報告書

エンスが高い傾向がみられた。下位尺度得点の特徴は,資質的要因である社交性と、獲得的要因である自己理解、他者心理理解の項目で一般大学生と比較して高い傾向であった(佐々木・備前の報告では、それぞれ8.5点、9.6点、10.6点)。1年生のレジリエンス得点も一般大学生よりも高かったことから,看護学生は入学時からすでに他の学部よりもレジリエンスが高い学生が多い集団といえる。看護師を目指す学生は、入学時からすでに看護師になるという明確な目標を持っていることや人と関わることを好ましく思う傾向があるため、これらの得点が高くなったことが窺えた。学年によるレジリエンスの特徴は、資質的要因得点が1年生と比較して2年生で有意に低くなったことである。資質的要因の下位尺度では、統御力と行動力で同様の傾向を示した。看護学生のレジリエンスは学年進行に伴って高められることを期待したが、獲得的要因得点の学年差はなく、学生が本来保持していたレジリエンスの特性を看護基礎教育では効果的に高められていない状況を示していた。看護学生が認知するネガティブイベントに、大学生活に伴う「学業」「人間関係」「心理的葛藤」の場面が挙げられており、学習難易度の増強や課題の増加、グループ学習などによる人間関係の葛藤、将来への不安や迷いなどの心理的葛藤を抱えていることが報告されている(福重・森田, 2016)。特に2年生で低下している統御力や行動力は、「不安などの感情や自己中心的な欲求をコントロールし、物事に対して目標や意欲を持ち、それに向かって努力する力」と定義されている(平野, 2010)。2年生の時期は、難易度の高い専門科目の学習に追いつけないことや、初めて経験する臨地実習での受け持ち患者や臨床指導者、実習グループのメンバー間の人間関係や心身の疲弊から現実を直視せざるを得ない状況となり、漠然と肯定的に考えていた将来像が揺らぎ、学生個人が持つ資質的なレジリエンスが低くなる傾向にあると考えられた。一方、3年生以降のレジリエンスは1年生の得点レベルに近づいており、個人差が大きいが、3・4年生で展開される臨地実習や卒業論文の作成を通して、レジリエンスを向上させたことが窺えた。隅田・細田・星(2013)は、臨地実習の場面におけるレジリエンスの構成要素を「信頼する他者から学生が受ける支援」「学生の内面の強み」「学生が主体的に実行すること」の3つとしており、上位学年では臨地実習を含めた様々な場面で主体的な行動が求められるために、友人や家族、教員、実習指導看護師などのソーシャルサポートを活用しながらレジリエンスを発揮していたと推測された。しかし、獲得的要因の自己理解得点は、1年生と比較して4年生で有意に低い得点であった。自己理解は「自分自身の考えや特性について理解し把握する力」である(平野, 2010)。臨地実習や演習では、繰り返し自分自身を振り返り、自己評価することが求められる。そのような経験を重ねることで自己理解は深まると推測したが、期待と異なる結果であった。調査を実施した時期が看護師国家試験の追い込み時期と重なり、国家試験に対する不安や将来への自信のなさが結果に反映した可能性もあるが、行動の自己評価や振り9