ブックタイトル平成28年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育研究事業報告書

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概要

平成28年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育研究事業報告書

返りに形骸化や慣れが生じており、自己理解の促進につながっていない可能性も考えなければならないだろう。(2)看護学生におけるコミュニケーション・スキルの特徴看護学生の対人コミュニケーション・スキルは、藤本・大坊(2007)が報告した心理系学部の大学生の得点と比較するとやや低く、藤本(2013)が報告した一般大学生と比較するとほぼ同一の得点であり、大きな特徴はなかった。下位項目では、6項目のスキルのうち反応系である「自己統制」「解読力」「他者受容」の3項目で1年生と比較して2年生あるいは3年生の得点が低かった。反応系は「自分の欲求や感情を制御して他者の思いを理解し、相手を尊重し共感できる力」である(藤本・大坊, 2007)。2年生では、レジリエンスと同様に看護専門科目における学習難易度の増強や将来像の揺らぎから思考が自己の内面に向かい、一時的に自分の欲求や感情をうまくコントロールできず、他者を受け入れる、相手の気持ちを感じ取る能力が低下すると解釈できる。また、この3項目はコミュニケーションに困難を抱えた人に選択的に反応するスキルであり、2年生ではコミュニケーションを苦手としている学生が多いことが窺えた。3・4年生では1年生と同等の得点になるが、決して高い得点になっているわけではない。上位学年になると臨地実習やグループ学習、社会経験を積むことでコミュニケーション・スキルが向上することを予測していたが、結果からは、コミュニケーション・スキルを効果的に活用できていない現状が浮き彫りになった。一般学生に比べて看護学生がコミュニケーション・スキルを低く自己評価した要因として、看護学生に求められるコミュニケーションは、臨地実習指導者や入院患者や高齢者などが対象であり、一般大学生と比べて難易度が高く、対人関係やコミュニケーション能力を低く評価している可能性も窺えた。(3)各学年のレジリエンスとの関連要因レジリエンスにどのような要因が関連しているのかを明らかにするために、レジリエンス得点と臨地実習の総合評価(困難感・満足感)、ENDCOREs得点との相関係数を求めた。臨地実習における評価については、全学年で資質的要因の下位尺度すべてと困難感が負の相関を、満足感とは正の相関関係が認められた。レジリエンスの高い学生は実習を肯定的に受けとめ、積極的コーピングを採択する傾向にあることから(山岸・寺岡・吉武, 2010;宇佐美, 2013)、本研究もこれらを支持する結果となった。1年生では臨地実習の困難感、満足感ともに強い正の相関が認められたが、臨地実習の評価を困難とする割合が少なく満足が高い割合が多かったため、他の学年と比較してレジリエンスの程度に影響を強く受けたと推測する。レジリエンスとENDCOREsとの関連は、4年生ですべてのコミュニケーション・スキルにおいて資質的要因と獲得的要因ともに正の相関関係が認められ、上位学年ではレ10