ブックタイトル平成28年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育研究事業報告書

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概要

平成28年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育研究事業報告書

した以外の影響要因との関連など、レジリエンスがどのように低下し回復していくのか詳細な検討が必要であろう。さらに、遠藤(1995)が日本における適応的な生き方はポジティブな属性を持っているかという個人レベルだけではなく、場や関係性の中で生じる適切だとされる行動を遂行することとも関連すると指摘しているように、看護専門科目で多用されているグループ活動における関係性のとり方とレジリエンスとの関連を検討することも教育的な示唆を得るためには必要であろう。一方、本研究の結果は、学年が進行するにしたがってレジリエンスが上昇するわけではなかったが、4年生ではレジリエンスとコミュニケーション・スキルの関連性を強め、対人葛藤ストレスに対応している実態を明らかにした。今後、レジリエンスに関連する要因の検討をすすめ、看護学生のレジリエンスの育成のためにどのような教育的かかわりが有効なのか検討する材料になると考える。(5)結論本研究では、317名の看護学生を対象に、学年によるレジリエンスの特徴と、レジリエンスと臨地実習における満足感・困難感、対人コミュニケーション・スキルとの関連を検討することを目的に調査し、以下の知見を得ることができた。(1)二次元レジリエンス要因尺度得点における学年による差異は、資質的要因の下位尺度である統御力と行動力で1年生と比較して2年生が有意に低い得点であった(p<.05)。また、獲得的要因の自己理解において1年生と比較して4年生で有意に低い得点であった(p<.05)。(2)臨地実習による困難感は、1年生では困難を感じる学生が少なく、2年生以降に困難を感じる学生が多くなっていた(p<.05)。反対に満足感は、2年生で満足をあまり感じない学生が多く、4年生では満足する学生が多くなっていた(p<.05)。(3)ENDCOREs得点の学年による差異は、自己統制において2年生で最も低く、1年生と3年生で有意差が認められた(p<.05)。また、解読力では1年生と比較して2年生が有意に低く、他者受容では1年生と比較して3年生で有意に低かった(p<.05)。(4)レジリエンスと実習の困難感ならびに満足感との関連は、すべての学年において、資質的要因と困難感で負の相関関係を、満足感で正の相関関係を示した。獲得的要因では3年生のみ困難感と弱い負の相関関係を示した。レジリエンスとENDCOREsとの関連は、資質的要因ならびに獲得的要因ともに自己統制、表現力、解読力、他者受容、関係調整の下位尺度得点のほぼすべての学年で有意な正の相関関係が認められた。一方、自己主張では資質的要因と3・4年生で有意な正の相関関係を、獲得的要因と1・4年生で有意な正の相関関係を示した。(5)臨地実習の満足感と困難感は、レジリエンスのうち個人のパーソナリティである資質的要因に強く関係することがわかった。また、レジリエンスや対人コミュニケーシ12