ブックタイトル平成28年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育研究事業報告書

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概要

平成28年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育研究事業報告書

のいずれも満たしていないと推定されるソマリアで、国連事務総長特別副代表(DSRSG)が常駐調整官(RC)と人道調整官(HC)を兼務するトリプルハットアプローチ(DSRSG/RC/HC)が採用され、一部の非政府組織(NGO)からは軍事・政治と人道の区別が曖昧になると懸念されている1。一方、戦略的統合の面において、国連は2006年に『統合ミッション立案過程』(IMPP)を策定し、IMPPは「国連システムがその関連部分をすべて関与させることにより、特定国における戦略目標について、共通の理解を確立するための手段」であると位置づけられた。IMPPは新規ミッションの設立から撤退または後継ミッションへの承継までの一連の過程における諸手続きを規定したもので、この手続きに基づき、現地の平和維持活動(PKO)/特別政治ミッション(SPM)、人道・開発支援機関で構成されるカントリーチーム(UNCT)、人道問題調整事務所(OCHA)等の国連機関は統合戦略枠組(ISF)を策定し、戦略目標並びに役割分担に対する理解の共有化を図ってきた2。2013年に入ると、国連はIMPPに代わり、『統合的評価と計画に関する指針』(IAP)を新たに提示している。これら両文書において、人道支援は統合の射程外となっており、国連人道機関が人道原則に基づく活動を遂行することに一定の配慮がなされている3。しかし、一部のPKO並びにSPMでは、和平合意を妨害する武装勢力に正当性を与えないために、国連人道機関に対し当該武装勢力との接触を控えるよう要請するような事例が報告されている。このように、近年の統合化の潮流の中で、人道原則が軽視され、軍事的・政治的要請が人道的要請よりも優先されるのではないかという懸念が払拭されていない4。本研究では、上記した統合化に関連した指針を逸脱するような事例をもたらしている政治的要因を明らかにすることを目的とする。(2)研究活動の方法先行研究並びに国連が公開している文書の文献渉猟に加え、国連平和維持活動局(DPKO)、政務局(DPA)、法務部(OLA)、フィールド調整局(DFS)人道問題調整事務所(OCHA)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の職員へインタビューを行った。(3)研究活動の結果と考察本節では、PKOやSPMの評価・計画立案過程を概観した上で、その過程に影響を及ぼす1UNOCHA, Policy Instruction: The Relationship Between Humanitarian Coordinators and Heads of OCHAField Offices, May 2011.2UN, IMPP Guidelines: Role of the Headquarters?Integrated Planning for UN Field Presences, 2010.UN, IMPP Guidelines: Role of the Field?Integrated Planning for UN Field Presences, 2010.3UN, Policy on Integrated Assessment and Planning (IAP), 2013.4Metcalfer, V., Giffen A., Elhawary, S., UN Integration and Humanitarian Space: An IndependentStudy Commissioned by the UN Integration Steering Group, Stimson Center and Humanitarian PolicyGroup, 2011.16