ブックタイトル平成28年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育研究事業報告書

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概要

平成28年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育研究事業報告書

とになる8。つまり安保理決議によって、同報告書に示された戦略、組織などはしばしば修正される場合があるということである。6事務総長特別代表への指令安保理決議が採択されると、事務総長から「事務総長特別代表(SRSG)への指令」が発出され、ミッションの戦略、組織、SRSGの責務等が周知される。同指令の発出以降、新規ミッションの計画立案の責務はITF等の国連本部の組織から現地ミッションに移行されていく。7統合戦略枠組(Integrated Strategic Framework:ISF)の策定現場レベルでは、現地ミッションとUNCTの指導部で構成される「戦略政策グループ」(Strategic Policy Group:SPG)と各国連機関の上級職で構成される「統合戦略計画立案チーム」(Integrated Strategy and Planning Team:ISPT)が設置される。SPGは現場レベルで戦略・活動上の問題についての調整と意思決定をする組織で、(ミッションとUNCTを含む)国連システムの戦略的方向性を提示する一方、ISPTは実際の統合的な計画立案とその計画の実行を推進する。最終的にこれらの現地組織はISFを作成し、現地での活動を展開する。ISFには、1現地情勢、平和の定着への課題、国連の果たしうる役割等を含む「統合評価」、2平和の定着に向けた優先課題、3平和の定着に必要な計画、4監査や報告の枠組等が盛り込まれ、現地のミッションとUNCTの活動の基準となる9。ISFにおいて、人道支援活動は、文民保護や避難民の帰還等の活動を除き、その射程からは外されている。2)評価・計画立案過程に影響を及ぼす政治的要因アーサー・ブテリは評価・計画立案過程には4つの阻害要因があると指摘している。第1に、統合にかかる「費用」と感覚的な「便益」にはギャップがあるとの指摘である10。多くの関係者は統合が現場の活動に目に見える便益をもたらしていると感じられずにいる一方、評価・計画立案には多くの主体が関わるため、調整、情報共有、合意形成に多くの時間(費用)が費やされていると認識しているというものである。第2に、統合には多くの調整が必要になる一方、計画立案能力が伴っていないという指摘である11。これまでに、国連は統合に向けた数多くの改革を断行してきた。しかし評価・計画立案過程には多くの組織が関わり、その手続きも複雑である。こうした統合の歴史的変遷と評価・計画立案過程を全般的に理解している職員は少ないため、計画立案能力が向上していないとしている。第3に、柔軟な資金運用と統合に向けたインセンティブの欠如であ8山田哲也「国連ミッションの設置・承継における内部手続きの概要と課題」20119Note. 310Boutellis, A., Driving the Systen Apart?: A Study of United Nations Integration and IntegratedStrategic Planning, International Peace Institute, 2013, p.10.11Ibid, pp.11-12.19