ブックタイトル平成28年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育研究事業報告書

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概要

平成28年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育研究事業報告書

合(UIC)を解体することに成功した。しかし、UICに代わる新たなイスラム勢力としてアルシャバーブが台頭する。アルシャバーブはイスラム法(シャリーア)に基づく統治を志向し、エチオピア軍の駐留に伴う現地住民の反エチオピア感情に乗じ、その支持を拡大させ、進駐していたエチオピア軍やアフリカ連合ソマリアミッション(AMISOM)軍に対する攻撃を活発化させ、2007年から2010年にかけて、その勢力を拡大させた。アルシャバーブの台頭に対抗するため、国際社会はソマリアへの介入を活発化させる。2007年2月、安保理は決議1744を採択し、AMISOMに対し、紛争当事者間の対話と和解の促進、TFGの関係機関の保護、国家安全保障安定化プログラム(NSSP)の推進の支援、人道支援に必要な安全の確保等の目的のために「必要なあらゆる手段」を採る権限を付与した。また、安保理は決議1863(2009年)に基づき国連アフリカ連合ソマリアミッション支援事務所(UNSOA)を設立し、AMISOMのロジスティック面の支援を始めている15。さらに、決議2036(2012年)では、2012年8月にTFGを引き継いだソマリア連邦政府(FGS)に対抗するアルシャバーブやその他の勢力の脅威を軽減するために「必要なあらゆる手段」を採る権限をAMISOMの権限に追加している。TFG(並びにFGS)、それを支援する国際社会とアルシャバーブとの対立の先鋭化は、UNOSOMⅡが撤退した1995年以降、中南部ソマリアに最大の人道危機をもたらしている。アルシャバーブによるゲリラ戦や自爆テロの他、一般市民の巻き添えを伴うAMISOM軍による報復攻撃等により、武力紛争による死者数は増加している。ウプサラ大学紛争データプログラムによると、武力紛争の犠牲者の数は、1990年代後半から2000年代前半にかけて年間約1,000人前後で推移していたのが、2006年には2,000人を超え、2011年には約5,000人にまで増加している16。また内戦に加え、2010年から2012年にかけて発生した干ばつにより、難民と国内避難民を合わせた数は、2005年の約65万人から2011年には約230万人に急増し、その後も200万人以上の状態が続いている17。同程度の干ばつが発生したにもかかわらず、飢餓には至らなかったケニア北部やエチオピア西部と異なり、中南部ソマリアだけ飢餓が発生したのは、内戦による多数の避難民の発生、農業の破たん、武装勢力による人道支援活動の妨害、米国からの支援の減少等が原因であった18。このように、治安情勢の悪化は避難民の増15United Nations Support Office for AMISOM (UNSOA)., UNSOA Booklet, 2015.を参照。現在は国連ソマリア支援事務所(United Nations Support Office in Somalia: UNSOS)がUNSOAの事業を承継している。16Uppsala Conflict Data Program (UCDP). UCDP Battle-Related Deaths Dataset,http://ucdp.uu.se/downloads/ accessed at 20 October 2016.を参照。17United Nations High Commissioner for Refugees (UNHCR) [2016], UNHCR Statistics,http://popstats.unhcr.org/en/overview accessed at 20 October 2016.18Bradbury, M. [2010],“State-building, Counterterrorism, and Licensing Humanitarianism inSomalia,”Feinstein International Center.21